Terrra

箱のTerrraのネタバレレビュー・内容・結末

(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

TIFF2021 ワールドフォーカス部門

祖母と二人暮らしの中学2年生の少年が、ひとり長距離バスに乗り父の遺骨を取りに向かう。
激しく扉を叩かれてもトイレからなかなか出てこない無表情の少年。いっさい台詞の無いファーストカットから、早くオトナにならざるを得なかった少年の頑なで内省的な性格が見てとれる。

帰りの車中、窓から父とおぼしき男を見かけて途中下車し後を追う。別人だと諭されても父を求める少年は男に付きまとい、ついには縫製工場の労働者集めをする男のアシスタントとして雇われる。

はたしてこの男は実の父なのか⁈もはやそこは主題ではなく、『ヤクザと家族The Family』で綾野剛に舘ひろしが必要だったように、少年はただただ抱きしめてくれる庇護者が欲しかったのだと思う。
ピックアップトラックの上でわざわざ靴を脱ぎ、眠る男の裸足の指にそっと触れる少年の行動が切ない。

父親の愛を求めるあまり次第に道を踏み外してゆく少年に、犯罪がごく身近にあるメキシコの闇を垣間見る。

別人として一旦返却した遺骨を再び受取り祖母のもとへ戻るラストカット、庇護者への思慕を断ち切りオトナとして生きていく覚悟を決めた瞳、「箱」を撫でる様子が素晴らしかった。

ある地点からある地点へ移動し戻る過程で少年が大人になる…とてもオーソドックスな構成の作品だが、35mmフィルムで撮影されたメキシコの荒涼たる景色が物語を強くしている。
Terrra

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