『希望も失った今、僕は息をし始める』
バルザックの原作の映画化。
2時間半という長尺だが、長編小説の映画化ということもあり、かなり丁寧に描いてる印象。
ピュアすぎる詩人の青年が、田舎から大都会パリに出てくるわけだが、溢れたインクが真っ白な紙を染めるように、詩人の心も都会の空虚で、どこまでも表面的な世界に染めらていく。
この表面的な世界は、僕たちの生きる現代、SNSによってさらに加速しているようにも思える。
現実はトリミング、編集、修正され、虚構で実態のない空虚な世界になっていく。
人々は優越感を得たいがために、虚構の世界で競争し疲弊する。本当に大切な今という感情を犠牲にして。
最後、都会で全てを失った青年が故郷に戻り、新たな一歩を踏み出す希望に満ちたエンディングは、予想に反してとても素敵だった。