Syoh

パワー・オブ・ザ・ドッグのSyohのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
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2021.12.07

孤独によって生まれた人間の嫌な部分を
ジョニー・グリーンウッドの音楽も相まってヒリヒリとした緊張感で描かれたような映画でした。

フィルはゲイであり、それを覆い隠す様に過剰な男らしさでふるまい、そこには唯一彼の理解者ブロンコ・ヘンリーの死による孤独。

フィルの弟ジョージは男社会の牧場経営や威圧的な兄フィルの態度に馴染めない孤独。

ローズはジョージと結婚し、バーバンク家で暮らす事で、裕福でインテリなバーバンク家での生活のギャップやフィルからの意地の悪いいじめによる孤独。

ローズの前夫との息子ピーターも孤独を抱えながらも救世主の様な存在に感じた。

ピーターが読んだ聖書の一節「私の魂を剣から、私の最愛の人を犬の力から救い出してください。」は母ローズの孤独を邪悪な犬の力「The power of the dog」から解放を願うものでもあると思うけど、
ピーターの炭疽菌による計画的なフィルの殺害すらも、フィルの闘病のシーンが一切描かれず、棺桶で安らかに眠るシーンに飛ぶのはピーターとの繋がりによってフィルも孤独から解放され死んでいき、ローズとジョージもフィルの死によって孤独から解放されたのではないかと感じた。

ピーターが3人の孤独をThe power of the dogから解放した。

ローズがネイティブ・アメリカンに馬の皮をタダで渡し、お返しに皮の手袋もらい、
それを美しいと涙を流しながら大切にしているシーンはローズにとって久しぶりに人と心を通わせ、優しさにつつまれた美しいシーンでとても好きだった。
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