hshuto

ベルファストのhshutoのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
2022年のオスカーレースは早くも始まっており、専門各誌ではこの「Belfast」がNetflix配信の「The Power of the Dog」と共に作品賞の最有力候補とされている。名優ケネス・ブラナーが監督、脚本を手掛けた本作は、彼自身の少年時代の思い出を描いた半自伝記。1969年夏から1970年春の北アイルランド・ベルファストでの出来事がモノクロで描かれており、一昨年話題となったアルフォンソ・キュアロン監督の半自伝記「ROMA」」を彷彿とさせる。そういえば、「ROMA」も1970年の出来事だったし、内乱紛争がテーマの一部だった。

少年バディの一家の宗教対立で荒れるBelfastからの転出を巡る日々を淡々と描いているだけなのだが、そこには当時流行った曲の数々、バディが家族と観る映画、そしてあの頃の子供が皆好きだった(と想像する)「サンダーバード」が。それらが当時少年時代を過ごした人々の郷愁を誘う。

ただ本作を楽しむには、物語の鍵の一つとなっている北アイルランドの宗教対立の歴史を事前に少しだけでも入れておくことを薦める。宗教の対立は現代の日本に生きる我々には多少縁遠いものでもあるので。

主人公を演じるジュード・ヒル君の熱演もさることながら、圧巻は祖母役のジュディ・デンチと祖父約のキアラン・ハインズ。特にジュディ・デンチ、登場場面は多くないが秀逸の演技。彼女が絡むラストシーンは、これまで観た映画の中でも心に残る場面のひとつとなった。

本筋から外れるが、舞台となる北アイルランドの首府ベルファストは、造船の町。なんとあのタイタニックもここで造られたということ、冒頭シーンを見て調べるまで知らなかった….思わぬ発見。
hshuto

hshuto