ツクヨミ

カウンセラーのツクヨミのレビュー・感想・評価

カウンセラー(2021年製作の映画)
4.6
映像編集と音響編集により成し得た劇場案件傑作スリラー。
心理カウンセラーの倉田真美は診療時間終了間際に現れた吉高アケミの診察を請け負うが…
見ている側までズブズブハマる没入型短編。近年稀に見る傑作スリラーと評判を聞いて本作を鑑賞したが、たしかにヤバいものを見た余韻がすごい怪作だった。
まず今作は映像編集に関して個人的にかなり好みで、フラッシュバックの入り方やうまいカット割にゾクゾクするほど魅了される。特に序盤のアケミの過去回想シークエンスでエレベーターのボタンを押して出る→後ろから押されドアを出るという素晴らしいムービングマッチカットから度肝を抜かれた。そしてアケミの語りからフラッシュバックしたと思ったら過去シーンのアケミが語りを引き継ぐような上手い流れ技もすごく好みの編集だったと言える。
そしてなんとも言えない空気感が恐ろしいのが今作の真骨頂であろう。基本カウンセラーの倉田真美が吉高アケミの話を聞いていき、アケミの過去を見ていくというシンプル構造になっているが、音響効果や上手い編集により何故か恐怖感がずっとあるのだ。基本BGM無しで静寂から唐突に響くギャップにも恐れ慄くが、シトシト雨が降っている音すら恐ろしく聞こえる音響効果がジワジワくる。そして終盤の倉田真美と吉高アケミの左右からくるボイスが"狂っているのはどっちか?"的な展開を匂わせ凍りつく仕様も素晴らしい。
シンプルな構成で時間も短いが、編集と音響により恐怖感が割増でビックビクの映像体験に恐れ慄いた。昨今の下手なホラーよりずっと怖かったのは間違いないし、"映画は編集によって生かすも殺すこともできる"というキューブリック監督の語録が身に染みた素晴らしい映画でもある。編集と音響の効果は実に劇場案件であるだろうし、興味のある方は是非劇場へ。
ツクヨミ

ツクヨミ