とらキチ

ワース 命の値段のとらキチのレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
3.5
9.11アメリカ同時多発テロの被害者と遺族に補償金を分配すべく奔走した弁護士たちの実話を描くドラマ。
あれからもう20年超。冒頭で流れるジェット機のエンジン音にあの時の記憶が甦る。そして9.11の被害者が航空会社を訴えないようにこんな補償基金プログラムが進められていたことは初めて知った。
淡々と事実(エピソード)を積み上げていく系の展開で、マイケル・キートン演じる、それまで和解調停のプロとして欧米人らしい現実主義、数値化理想の価値観であったケネスが、未曾有のテロ被害者達に接する事で、次第に変化し人間性を取り戻していく物語。
そんなケネスの導き出した算出方法に当初からずっと意を唱えてきた、スタンリー・トゥッチ演じるウルフが、何をきっかけに考えを翻し、そしてケネス自身も杓子定規な換算式からどの時点で“裁量”を重視しだしたのか、その描き方がちょっと弱いかなぁ、と感じてしまった。
威勢よく、イラクの関与をほのめかし、後のイラク戦争への呼び水となる演説をする“子ブッシュ”と、その一方でテロの被害に苦しむ遺族に対し「せめてもの助けになれば」と寄り添い苦闘する弁護士達の姿の対比が印象的だった。
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