紗

ちょっと思い出しただけの紗のネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

試写会で一足早く鑑賞。松井大悟監督の質問コーナーもあり、より一層楽しめました。

尾崎さんが最も影響を受け、バンド名の由来にまでしてる、ジム・ジャームッシュの映画作品『ナイト・オン・ザ・プラネット』を基にに製作された、クリープハイプの楽曲『ナイトオンザプラネット』を松居大悟監督が映画化した作品。楽曲は2年前ぐらいに渡され、そこからこのプロジェクトが進行したそう。
松居大悟×クリープハイプ×池松壮亮という、長年一緒に制作してきた最高のタッグをもう1度見れるというだけで充分なんだけど、内容も勿論素晴らしかったです。

マスク、という現代を象徴するもののお陰で、照生の怪我という決定的な伏線回収より先に物語の設定に気付けました。悲しい別れで終わる脚本にしたくないから、過去に遡る設定にしたと監督が話していたけれど、葉と照生だけでなく公園で待っているおじさんのように、みんな出会いと別れを繰り返しながら明るい未来に向かって進んでるんだな、と元気を貰える。

本当は葉がダンサーで照生がタクシードライバーとしてキャスティングまで行っていたけれど、主演が決まった後変更したらしい。タクシードライバーは「様々なお客さんと会話する」ダンサーは「言葉以外の方法で想いを伝える」という職業も性格も正反対の2人を、伊藤沙莉ちゃんと池松壮亮さんの雰囲気も相まって演じきってました。初めはその違いが心地よかったけれど、別れの原因となってしまったというよくあるシーン。。。

ニューヨーク屋敷さんは、チャラいけどみんなから好かれるのがばっちりだと思い、脚本を当て書きしたとのこと。確かに、照生とは真反対のタイプだから、葉が辛い過去を乗り越えて幸せになった、という納得感が得られるな〜。ミニシアター内で爆笑が起こった「夏始まったっすわ」はアドリブって知って驚き。

そして、クリープハイプ。ライブシーンまであるし、選曲もまさかすぎた。弾き語りの部分はテンポが遅い曲の方がダンスシーンに合うと思ったから話し合ってen.ダーリンを選んだみたい。別れの曲を2人が出会った日にかかっているのも良いです。サビでダンスを始めたかったから、イントロ部分は全てアドリブで照生の地団駄が入ったらしいのですが、あのシーン映画の中でも印象に残ってて素敵だったな〜。

「ちょっと思い出しただけ」というちょっと〜だけ、は実はかなり回想をしているけれど強がってしまう気持ちを表していると監督が話していたのが腑に落ちた。回想していたのは葉の方だったけれど、照生もきっと國村隼からケーキ貰う時に思い出したのかな、とか思ってしまいます。

素敵な作品すぎて色んな人に届いて欲しい。そして、映画を見る方・見た方は、是非クリープハイプの「ナイトオンザプラネット」を聞いて、公式YouTubeにある歌詞解説動画まで見て欲しいです。映画と重なる部分もあるし、尾崎さんの歌詞に込めた想いを知るとより楽しめると思います。
公開されたらもう1度見に行こう。
紗