これは久々に何度も観たくなる作品だった。
流行って欲しいなあ。
出会い、交際、絶頂期、破局、破局後の日々っていう男女のイニシエーションを回想していく(しかも逆から)訳だけど、不倫とかDVとか変態性だったりは無く、尾崎世界観が関連するプロジェクト特有の「メンヘラ味」は良い意味で薄味。
むしろやるせなさはあるけど風通しが良くて飄々とした雰囲気さえある。
心象変化の描き方も洒落ていて、近所の人への挨拶とかお地蔵さんに手を合わせるとか部屋の散らかり方とか、日常の些細な変化で感情の機微が伺えるのが秀逸。
過去の恋愛を振り返る作業って、切ないけれど今の自分の生活に決定的に関わってはこないものであって、それを「ちょっと思い出しただけ」っていうラフな言葉で表すのが、気丈でいて照れ隠しのようでいて凄く良い表現だなと思った。
ナイトオンザプラネットのオマージュも随所に散りばめられててニヤつくし、伊藤沙莉さんとウィノナライダーってどことなく通ずる雰囲気があるというか、多分映画プロデューサーに誘われても「女優よりも整備工になりたい」って普通に言えそうな感じがあるんだよな。
タバコも似合うし。
これからご覧になる方は是非、クリープハイプの歌詞を読んで、ジャームッシュの元ネタを観賞してからをお勧めします。
吹き替えよりも字幕で。