くろさわ

ちょっと思い出しただけのくろさわのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.8
物語が進むにつれて恋の美しさを感じると同時に切なくなる。

「あらすじ」
2021年、タクシー運転手の葉はお客がトイレに行きたいので止めて欲しいと言われ、ある施設の前で停車する。お客の戻りを待ちながら、施設の中を歩くと、そこには昔付き合っていた元恋人を見かける。彼を見ながら、1年、また1年と過去をちょっと思い出す。


クリープハイプの楽曲「ナイトオンザプラネット」を元に構想・制作された作品。
本作のために、楽曲のリリースも1年以上遅らせたというエピソードが二人の信頼関係を表していて好き。

東京国際映画祭の観客賞を受賞してかなり注目されている作品。

池松壮亮さんと伊藤沙莉さんのダブル主演。
照雄の誕生日7月26日を6年分振り返る進め方は逆ではあるけどロネ・シェルフィグの「One Day」や、恋の終わりから始まりを辿るのは「ブルー・バレンタイン」を思い出した。 

現在から1年、また1年と過去を物語は進むんやけど、その瞬間では意味・背景がわからないやりとりも過去を遡ると意味が分かる撮り方は気持ちがよかった。
楽しい時はどんなやりとりも楽しめるのに、お互い心がすれ違っている時は、前楽しめたやりとりさえも苛立ちに変わってしまう。

また、他の恋愛映画と違い、恋の美しさと切なさがほぼ同時のタイミングで感じさせる構成が凄かった。あのときのタクシー運転手最高だった。


松居大悟監督とクリープハイプがより好きになった作品。今作がきっかけとなったらさらに元の「ナイト・オン・ザ・プラネット」も見てみたい。