ずっとマイリストに加えていながらも、何となく観るタイミングが重要な気がして保留していた作品。
時系列が遡って行くという、その構成はとても面白かったし、上手くハマってたいたように思う。
少し残念だったのが、そのキッカケになっていたアナログのカレンダーが、シンプルに分かりづらかった点か。
通常は映画の時間軸と、物語上の時間が進むにつれて、ハッピーな方向に結実していくが、この作品は物語上の時間が遡るにつれ、二人の間の幸せな時間の記憶が蘇って行くところが、なんだか微笑ましくも、甘酸っぱさ満載だった。
『佐々木インマイマイン』もそうだが、この作品も『ちょっと思い出しただけ』というタイトルが秀逸。
伊藤沙莉演じる葉にとって、その日にケーキをつい買ってしまうように、本当は「ちょっと」じゃないけど、そう自分に言い聞かせて、今ある日常を生きていこうとする、あの感じは良かった。
冒頭の方で喋っていたタクシー運転手の良さについて、すごく共感できた。
「どこかには行きたいけど、それがどこなのかは自分では分からない、決められない。
だからお客さんに連れて行ってもらえるのは良い」といった趣旨の話。
「今日どこか行きたいな」と思いつつ、そこがどこなのか分からずじまいで、結局家から出ずに終わってしまうことがある自分には響いた。
最後、エンディングの曲だけは、ちょっと温度感が違ったような気がする。
曲が鳴り始めた瞬間、ややさめてしまった。
しかしつくづく自分は池松さんが好きだなと改めて思った。
