ツクヨミ

麻希のいる世界のツクヨミのレビュー・感想・評価

麻希のいる世界(2022年製作の映画)
2.1
風は私たちを地獄へも目的地へも連れていってくれる。
高校2年の由希は難病を患いつつも孤独な学校生活を過ごしていた。そんな折、麻希というかつての友達と再会した彼女は…
生きがいとも言える人間に捧げた彼女の学生生活を綴った青春劇。今作は高校生という思春期真っ盛りの子供たちの葛藤と苦い人間関係の綻びを見つめた青春映画だった。
まずオープニングのポエム的な文章がこの映画のテーマをよく表している。"風を止めなければならない。風は私たちを地獄へも目的地へも連れていってくれる"というような内容で最初は理解不能なポエムなのだが、作中何度か挟まれる主人公が風に吹かれるシークエンスがポエムの事象をうまく映像として表現してくれていた。主人公由希にとっての"地獄"と"目的地"とは何か、それが感じ取れるか取れないかで本作の評価は一段と分かれそうだ。
まあ結局言ってしまえば今作は説明不足感が強く理解に苦しむ点は否めない。後半にかけて少しは過去が露わになる展開もあるが、肝心なはずの主人公由希と麻希の過去が一切描かれないため、現代での彼女たちの関係性の大元がわからないからイライラしてしまう。それがわかれば評価上がりそうなのにという問題がたくさんありすぎるというのが玉に瑕な作品という印象。
しかし今作は主人公由希と麻希が楽しく戯れるシーンはカメラワークの美しさもあってか見ていて微笑ましくなった。特に映画のポスターにもなっている草っ原で2人横たわるシークエンスはカメラが近いのもあって2人の関係性をうまく表している良シーンだろう。
全体的に説明不足感が否めず描写に関しても理解不能な欠陥品な印象があったのは確か。しかし由希と麻希の関係性をうまく映したカメラワークだったり監督の描きたいテーマがしっかり描かれていたりと芯はしっかりしていたのが好印象だった。見た後にも何か忘れられない要素があったのは間違いない。
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