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機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島のmitakosamaのネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

期待半分・不安半分で見た今作。
初日に見て咀嚼し続け未だに飲み込めないでいる。

劇場版3部作でカットされた、テレビアニメ15話をピックアップして一本の映画として脚色した作品だ。
このアプローチ自体は面白いが、やはりアレンジの仕方にセンスが問われるよな。

↓以下ネタバレ
ズバリ僕が気になったのは、ドアンが“実は脱走兵でなかった”という設定の改変だ。
実はマクベの核弾頭の発射基地の管理者という極秘任務を持っていたこと。
司令部からの命令でミサイル発射が無い為に、サザンクロス隊が派遣される。
ドアンはミサイルが大気圏外で爆破する様に細工をしていた。


うーーむ。
どう考えても、この話はドアンが脱走兵だから成立する話だろう???
自分が親を殺した償いとして子供たちを引き取り軍を抜けた筈なのに。
それが実は軍務に就いていたなら、何のために子供を引き取ったの?

最後ザクを投げ捨てるのも、脱走兵ならわかるんだよ。軍を抜けたが「戦いの血が敵を呼ぶ」から戦いへの未練を捨てたんでしょ?

それにサザンクロス隊はなんでドアンに裏切られたと勘違いしてるのよ?極秘任務とはいえ軍部内の転属くらいは伝わるだろう?

シャアに匹敵すると設定が追加されたが、そんな優秀な軍人をパイロットを辞めさせてまでミサイル基地に配属してたのも変だ。

ロランはドアンの”仕事”について認識している。仕事…という事は賃金が支払われていたということか?
先ず灯台での食卓がちゃんとしてるのも気にはなってたんだ。スープにサラダに、パンまである。あのパンはどうしたんだろ?焼いたの?買ってきたの?

子供達がめっちゃ増えたが、あんな子供達のお手伝いで畑を耕して自給自足が出来る訳も無いし、今まで電気も無かったのに無人島でサバイバルが出来るとは思えん。
いくらドアンが優秀でも他が子供だよ?

なんか考えれば考えるほど変なんだよ。


一応、今作はオリジンベースであるのでファーストとは若干設定が違う。
一番の違いは、ジャブローとオデッサのエピソードが逆になってる点。
故にファーストではリュウが生きていたが、今作ではリュウは亡く代わりにスレッガーがいる。
またハヤトがガンタンクからガンキャノンに乗り換えている等など…。
ドアンがかつて所属していたのがサザンクロス隊とあるが、おおのしゅんじの漫画は完全無視なんやね。わざわざ安彦タッチで描かれた漫画なのに(笑)

映画としてバトルシーンを増やす為に設定を色々盛り込んだのはわかる。
だが、盛り込むならドアンが子供達を引き取るシーンをちゃんと見たかったよ。戦争孤児を引き取り、子供達の信頼を得る様になり、かつて信頼されていた部隊を離れ、無人島で生活を始める。どれだけのドラマがあったのか。


そして安彦良和はアニメーターとしては超一流だが、演出家としてはどうしても富野には劣るよ。
例えばブライトのキャラ付け。ブライトは若くして責務を任されヒステリックで実は内面の弱さから去勢を張っている。
安彦は「あーあ弱っちゃったな」ってコミカルな描写を好んで描く。でも本来の富野ってキャラの内面を直接的にはなるべく見せずに、でもキャラの本質がわかる様に描写してるんだよね。
このセンスの差よ。

安彦良和の功績を踏まえ敬意を表するからからこそ、辛口に評価した。ガノタを自認するが手放しに何でも喜ぶ訳じゃ無いよ。
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