Monsieurおむすび

親密な他人のMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

親密な他人(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

孤独な中年女とオレオレ詐欺の受け子の奇妙な連帯は、親子でも恋人でもない関係を鍋でグツグツと限界まで煮込んだ暴発寸前の不安が充満する。
更に生活音の不穏さやコロナ禍の猜疑心、絶対的な家族主義や社会の希薄な親密性を炙り出す意欲的なスリラーになっている。

日本特有の犯罪だというオレオレ詐欺に着想を得たらしい本作。
異質な存在への拒否反応を存分に発揮し、自分の子供や孫への盲信的な信頼や愛情が如何にも日本人らしく描かれている。
しかし、本来の親密と呼べる繋がりを築いているなら、オレオレ詐欺のように電話一本で騙せるだろうか?
これはどこか孤独な心が拠り所を求めているが故の、もっと言えば依存がなり立たせている現象な気がする。
同時にキャリアを諦め、子育てを終えた熟年層以上の女性が家という牢獄に囚われることで陥る渇きのようなもの。
そんな日本社会の背景が見てとれた。

黒沢あすか演じる恵がその闇に堕ち、不気味で妖艶な怪人物に成り果てていながらも、真の意味では慈愛に満ちている。

中年女性を描いた映画が日本には無いことに疑問を抱いたという監督。
なんだか、恵を通しての復讐劇やダークヒロインものにも思えてくる。
とにかく、中村真夕監督と主演 黒沢あすかの共犯関係は見事だった。
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