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リコリス・ピザのtomohitooguroのネタバレレビュー・内容・結末

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

まるでリコリスで作られたピザを1ピースずつ食べていくような、甘いのか不味いのか感じ方は人によりけりな、そんな思春期の好いた妬いたをゲイリーとアラナに託した文字通りの青春映画だった。
15歳の少年と25歳の女性の恋愛、15歳の少年による起業、誤認逮捕、酔った勢いで悪ふざけする大御所の映画監督と俳優、ジョン・ピーターズ、ガス欠トラックでのバック走行。これらのエレメンツは少し現実離れしていて、ファンタジーすら感じるものであった。しかし1970年代の空気感やベースにモデルとなった人物が存在することなどを意識すると決して無くはないストーリーだったと思う。

恋愛面を中心に語るなら、なぜゲイリー少年はアラナと5分ほどの会話を交わしただけで彼女のことを「結婚したい女性」と思うに至ったのかが不明だった。確かに会話のテンポやウィット感が素晴らしい冒頭のナンパシーンだった。でも結婚を意識する程のビビビ感は感じなかった。その後わりとすぐにゲイリーは別の女性に色目を使っているし、若気の至りと言ってしまえばそうなのだろうが気になった。その後の、付き合うまでは行かないがお互いに意識し合っているが別の異性にも気を取られる感じはまさに青春。相手を思いあう気持ちを天秤にかけた時に重い方が嫉妬してしまうあの悪循環もまさに青春映画だった。

大変申し訳ないがショーン・ペンとトム・ウェイツのあのバイクシーンはつまらなかったし、必要ないと思った。レストランで食事してるみんなが近くのゴルフ場に行って火渡り飲酒運転バイクを鑑賞するなんてできるわけないだろうが!まあトム・ウェイツの存在感を確認できて良かったな。

今作の白眉はやはりオイルショックパートだと思う。今作の宣伝でも使用されている楽曲 Life on Mars?から始まり、エキセントリックなジョン・ピーターズとのいざこざ、最後にはアクション映画ばりのトラックシーン。めちゃくちゃ面白かった。

ピンボールパートで不満がひとつ。いやこの映画のエンディングの流れについての不満だが。
アラナは市長候補のワックスに絶対に気が有りました。これは確実です。そんな彼女がワックスにお酒に誘われます。小走りで向かうアラナ。しかし呼ばれた理由は、ワックスがLGBTQであることを隠したいが為に自分のパートナーの彼女役として振る舞うためでした。悲しむワックスのパートナー。そしてゲイリーの元へ走り出すアラナ、、、。報われない気持ちの穴埋めとして相手を利用しているような印象のラストだったんですねー。でも不思議とマイナスな感情なく鑑賞できたのはやはりポール・トーマス・アンダーソンの素晴らしさなんだろうな。多分この二人はこれからも映画の中で起きた恋愛関係のいざこざが続くだろうと思えて仕方ないがそれも青春なのだろう。
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