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ゴッドファーザーPART IIIのIDEAのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザーPART III(1990年製作の映画)
4.1
私のこの眼に映る、栄光を掴んだ一家の姿。
「素晴らしい。夢のようだ!」

そう、夢だったのだ。
私が見ていたもの、それは遠い"過去"の虚像。
私が"未来"と信じて疑わなかったその輝きは、とうの昔に失われていた。

誰もが敬意を払う"ゴッドファーザー"
そんな父の志を受け継いだ。
人の心を掌握し、操り、富そして尊敬を勝ち得た。
なのに何故こんなにも孤独なんだ?
誰か私にそっと寄り添ってくれないか?
代わりに全てを与えてあげるから。

はてさて、操る側の人間である私の手足に絡まるこの糸は何だろうか。
マイケル・コルレオーネを人として繋ぎ止めていた糸が失われたその時、崩れゆく世界で彼は気づく。

自分こそが
愛に翻弄された操り人形だったのだと。



注)ラストシーンへの言及があります。再編集版である『最終章』の副題が既に結末を物語っておりますが、情報を完全シャットアウトしたい方はここまでで。




ラストカットに至るまでの印象は『PartⅢ』と再編集版の『最終章』で味わいが異なり、『最終章』の方が話の筋がシャープだったように感じる。
ただ、ラストカットは間違いなく『PartⅢ』の方を推したい。

『最終章』の方は、愛に報われなかった現世をさえぎるようにサングラスで目を覆う訳だが、それは天に召されたマイケルがもしかしたら次の場所では愛に包まれるのでは…?との願いを込められるような幕引きだった。
ある意味希望が持てる終わりだと感じる。

『PartⅢ』の方は、まさしくGodfatherのロゴを想起させるような糸が切れたかの死に様で、栄華を誇った男の人生が儚く無常に終わってゆくその姿には、哀しいながら美しさすら感じた。

『PartⅢ』は公開時に大変酷評されたようなのだが、『最終章』へと化粧直しをして観客の前に再び現れたこの作品が、時を経て再評価されることを切に願う。


私の頬をつたう一筋の涙は憐れみの涙ではない。
偉大なる"Godfather"に愛を込めて----。
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