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ゴッドファーザーPART IIIのEDDIEのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザーPART III(1990年製作の映画)
3.6
“ゴッドファーザー”マイケル・コルレオーネの最期。三部作の完結というより前二部作の後日譚として観た方が良い。2作目が完璧なまでの傑作だっただけにコルレオーネ家の末路があまりにも辛く悲しい。

一本の映画として考えたとき、本作は実に素晴らしいとも思えます。社会的にも注目された実際の事件(ヨハネ・パウロ1世の急死など)も名称や登場人物名を変え組み込んだ点がより現実問題として想像力を掻き立てられます。
人間は必ず老いる。マイケル・コルレオーネも老いや病気には勝てなかった。そういう描写を入れるのは現実主義者である私自身全然受け入れがたいものではありません。ただそれ以上にマイケルの最期に至るまでのアプローチがあまりにもファンを蔑ろにしてはないだろうかと疑問を持たざるを得ない感覚も覚えました。

正直なところフランシス・フォード・コッポラ監督が、実の娘であるソフィア・コッポラを主要キャラの1人メアリー・コルレオーネに当て込んで重要な要素として組み込んだのは別にいい。だけど、やはり彼女は演技が浮いていました。この重厚なマフィアの物語の完結編に絡ませるには役不足だと言わざるを得ない感覚です(個人的に監督業としてのソフィア・コッポラは素晴らしいと思うのですが)。
賛否は分かれると思いますが、コルレオーネ家の後継者であるヴィンセント・マンシーニを演じたアンディ・ガルシアは良かったと思います。マイケルの兄ソニーの実子。所々ソニーの遺伝子を受け継いでいるんだろうなと思わせる血気盛んさを感じられたのも良かったです。ヴィンセントとメアリーの厨房での情事はとてもエロスを感じました。あの扉の向こうから撮影しているような構図。コッポラ監督の変態さを味わせていただきました。実の娘が俳優と絡み合っている様子をどんな気持ちで撮っていたんでしょうか…。

何よりも前作まで重要な役回りだったトム・ヘイゲン役のロバート・デュバルの不在が痛かったですね。大人の事情があっての不在だったようですが、いつの間にか死んでいるというぞんざいな扱われ方…。当時のファンはどう感じたのでしょうか。16年ぶりの続編ということで胸躍らせて行った方はガッカリしたんじゃないかなぁ。

ネットの世界では『トイストーリー3と4論争』みたいなものもあります(すみません、名称はいま勝手につけました)。
『トイストーリー3』が最高傑作なために4での展開が許せないとかダメだとか色んな意見あると思います。好き嫌いは別に勝手なので自分の感想を大事にして欲しいなとは思うんですが、本作はまさにこれに似ていて、『ゴッドファーザーPART2』が最高だっただけに、本作はあまりにも酷いと。
だけど感情的なことを抜きにして、映画として十分に面白いんです。だけど、ファンの気持ちを蔑ろにしているなと。

個人的にはですが、これは『トイストーリー』よりはタチが悪いかもしれません。
『トイストーリー』と比較するのも違うかもしれませんが、私は冷静に考えたら「トイストーリー4』は十分に楽しませてもらったし好きな作品なんです。
だけど、本作はバランスを考えるとやや精彩を欠いているなと。役者はアンバランス、着地点があまりにも不幸すぎる。
マイケルはファミリーを大事にする一方で自分の偏愛のせいでひとりぼっちになってしまいました。その粛清は2作目のラストに十分味わったはずです。
彼が老いてマフィアとして力を失っていくという描写はまだしも、まだ彼から大切なものを奪っていくのかと悲しみが込み上げるばかり。

カジノホテル「パラッツォ・アズーリ」で行われた幹部会のヘリ襲撃のシーンはめちゃくちゃ見応えがあって本作の中では気に入ったシーンでした。
アル・パチーノもダイアン・キートンも個人的にはアンディ・ガルシアも素晴らしかった。ソフィア・コッポラの演技とロバート・デュバルの不在がかなり痛かった。そして結末が何よりも痛かった。

※2020年自宅鑑賞201本目
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