母と父と長男と次男と一匹の犬が車に乗ってどこかに向かってる。どこに?なんのために?どうしてかは場面が進むたびに段々とわかってくる。
全体的に色のトーンがグレー味を帯びていて、広大な景色、雄大な高原、閑散としている住宅、車を走らせ向かう先は...
悲しみを必死に隠して平然を装う母、鋭い目つきで睨みピリピリしている父、多くを話さずずっと悲しい顔をして時折そっと涙を流す長男、何も真実を聞かされず無邪気に楽しむ次男、死に際の犬
、家族の会話が結構攻撃的だけども愛を感じる。
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いつだって大事なことはその多くを明確に口にしない。表情や「墓」「死」など言葉の節々に感じれる。
好きな映画は?と聞かれて『2001年の宇宙の旅』だとそれは禅のような映画だと答える長男
私にはもう何もない、私に残るのは貴方と坊やだけ、もう家も車も全部売り払い、長男に未来を託し送り出す両親
もう子供じゃないんだと、成人したばかりの長男は本当に生きたまま国境を越え、異国の地へ辿り着くのかわからない。誰もこの先のことはわからない。未来に不安を抱えながらも進むしかない。車を走らせるしかない。前を向くしかない。
そこで目に触るのは次男の無邪気さ、何も知らない、わかってないその無垢さや無邪気さに救われる部分もあれば、憎ましい部分もあって、、、
物語が進み、お別れが近づくとどんどんカメラが遠ざかっていく。カーステレオから流れる歌謡曲の歌詞は悲しいのに曲調は明るくて、ピアノのBGMは不安を掻き立ててくる。
初めのカメラワークや、車の撮り方、全体的なシーンのつなぎ方や表現の仕方が好みで良かった。役者の表情もいい。ラストのMV感は否めないけど、次男の憎めない可愛さが際立っていいかも。