Omizu

永安鎮の物語集のOmizuのレビュー・感想・評価

永安鎮の物語集(2021年製作の映画)
3.7
東京フィルメックスコンペティション部門
カンヌ映画祭監督週間に出品された中国映画。先日閉幕したトルコのボスポラス映画祭では見事作品賞を受賞したらしい。

それも納得のかなり完成度が高い作品で、ごく自然に笑いが漏れメタ的な視点も効果的。

三幕構成になっており、個人的には第一幕が一番好きかな。ネイルや服といった丁寧な描写の積み重ねがしっかりヒロインの心情と結びつき、最後のあのなんとも言えない表情に説得力を持たせている。また二幕も女性の話で、人間関係の機微が丁寧に描かれていた。彼女が本当に幸せそうに笑うのはここなんだ、と安心しているとそんな簡単な着地はさせてくれない。ビターな後味もとても良い。

三幕目は監督と脚本家を巡るメタ的な話で、一幕、二幕の集大成とも言える映画論的な章と言えるだろうか。プロデューサーやスタッフとの人間関係もユーモラスでありながら「それでも映画はできなければならない」というラスト。

正直二幕目で終わっても良かったと思ったが、「監督の前作」についての言及が三幕でされるのでこの構成は必然と言えるかもしれない。

映画をつくることについての映画でもあるし、女性の生き方を問うような視点もある、なかなか優れた作品のように思う。
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