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雨に叫べばのプライのレビュー・感想・評価

雨に叫べば(2021年製作の映画)
3.5
舞台は80年代の映画制作現場。新人監督のデビュー作の撮影でスタッフたちが悪戦苦闘するコメディ調のお仕事&人間ドラマ。

性別・部門別・立場上によるスタッフたちの対立と葛藤は『カメラを止めるな!』を彷彿とさせる。特に男性カメラマンと女性の撮影助手の上下関係は結構似てる。だが全スタッフに信念と立場が持っていることを印象付けさせ、対立が生じてもスタッフ1人1人の熱意を汲み取れる構造となっている。ただ、肝心な主人公の熱意にライドするのが難しい。主人公の映画制作に対する熱意や葛藤は仕事的ではなく、母親に思いを向けた感情的かつ芸術的感性なもので実体や馴染みがないから把握しづらい。その上「映画監督は他の人間には見えてないものを撮る者」というリアル路線でストーリーが進むため、主人公の感情が芸術的感性の域となり、把握のしづらさに拍車を掛ける。自分のイマジネーションを言語化できない新人監督というリアル感は伝わってくるが、芸術的感性の葛藤は万人向けはしない。おそらく、多くの方々が本作を鑑賞する際には主人公への感情移入が難しい。少なくとも、オチで作品を制作した思いを言語化してしまうので、それを開幕直後にやっていれば主人公の目的が鮮明となり、感情移入しやすかったと考える。

主演が松本まりかさんであり、その他の出演者は名バイプレ俳優を揃えているため、演技面では純粋に楽しく見れる。ストーリーはギスギスしてるがコメディ調のためライトに観ることが出来る。大山真絵子さん、染谷有香さん、そして子役出身の須賀健太さんが堂々たる脱ぎっぷりを披露する。松本まりかさんとモトーラ世理奈さんによる性差別を押し除けて現場の前線へ立つ姿勢には爽快感がある。ただ、『ハケンアニメ!』もだったけど、劇中で成長しないといけないキャラクターの何人かが成長描写がないまま急に心がひっくり返ってしまうのは残念ポイント。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐
星の総数    :計14個
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