櫻イミト

プラーグの大学生の櫻イミトのレビュー・感想・評価

プラーグの大学生(1926年製作の映画)
3.5
1913年の「プラーグの大学生」を、豪華スタッフによってリメイク。

監督・脚本は「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)の脚本を手掛けたヘンリック・ガレーン。撮影監督は同作のギュンター・クランフ。
「カリガリ博士」(1920)組から、出演コンラート・ファイトとヴェルナー・クラウス、美術ヘルマン・ヴァルム。

1820年。プラハの大学生バルドゥインは剣の達人として知られていた。ある日、落馬した貴族の娘を助け恋をするが、彼女には裕福な婚約者がいた。貧乏なバルドゥインが嘆いていると、魔術師スカピネリが金の援助を申し出る。交換条件は彼の部屋にあるもの全部、条件のなかには鏡に映るバルドゥインの姿も入っていた。。。

旧作はドッペルゲンガーの先駆作品で内容は画期的だったのだが、映像・演出が追い付かず、主役・原案のパウル・ヴェゲナーも太り気味のミスキャストで惜しい仕上がりだった。それが豪華スタッフ・キャストによってリメイクされ申し分のない完成度となっている。コンラート・ファイトは相変わらず魅力的な演技を披露。そして、前年の「芸術と手術」(1925)で表現主義を極めた名カメラマン、ギュンター・クランフはいくつかの実験的ショットを繰り出していて見どころになっている。所謂”めまいカット”も用いられていた。映画としてのデティールがハッキリしたことで、本作のプロットが「ファウスト」の応用であることが浮き彫りになっていた。

ただ、この時期のドイツ映画に見られる、シナリオの途中足踏みによる長尺化が本作にも感じられたのが惜しい。編集によって様々なバージョンがあるらしいので、完全版の発表を望みたい。
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