たんこ

オッペンハイマーのたんこのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

イギリスにて鑑賞。
映画としてはあらゆる意味で完成させていたし、ノーランの作る映像には今作も変わらず見惚れました。核実験の再現シーンは臨場感やばかった!あのシーンの為だけでもIMAXで観るべき。でもオッペンハイマーと原爆が題材にしては普通だったなぁ、そこらの伝記映画と変わらないかなー。まぁ私イミテーションゲームもハマってないから好みかもだけど。ノーランの見せたい魅せ方、撮り方、セリフ、表情、映像、構成、俳優、はいわかりました素晴らしいです!!っていう。

で、この映画レビューとは別に海外でこれを観た日本人として思うことはたくさんある↓

これ、映画自体はあくまでオッペンハイマーの一人称(アメリカファーストではない科学者の目線)で描かれてるから、本当に受け手次第で重さが決まる作品だと思う。だけどbarbieheimerなんてのが流行ってる時点で希望薄い、BBCのニュースでも普通にキャスターが言ってて幻滅した。原爆題材にしてるエンタメって少ないしまだセンシティブに捉えてもいいと思う。

核兵器の投下って、日本にとっては敗戦と被爆、世界にとっての終戦、アメリカにとっての勝利。だから何とも言えない、終戦は誰にとっても良いことだし。でもこの映画を作ったのはアメリカで、勝利の国で、原爆投下はその鍵で、オッペンハイマーは(彼自身後悔していたとしても)英雄で。いやー、やっぱり手放しで面白いとは言えないのかななんて。唯一の被爆国の日本人がセンシティブに扱わないでどうするの?とも思うし…。=公開見送りすべきではないけど、協議してるのは納得。むしろノーラン作品だからって盛り上がって公開しなかった日本の映画業界に驚きちんと機能してる!!

あと印象に残って離れないのが、どこにボムを落とすか話し合ってるシーン。胸糞悪いし全く面白くなかったじゃん?どの国籍の人もその反応が正しいと思うし、ノーランもそういう惨さを描いたんだと思う(思いたい)。けど、笑ってる人チラホラいて反吐出そうになった。アメリカで観た友達は全体で笑いが起こってたって言ってた。受け手がそれだとこの映画は意味を成さないと思う。核兵器投下後のヒロシマの写真から目を背けて見られなかったオッペンハイマーは良かった、そうだよね見られないよねって。でもちゃんと見て欲しかったし、ノーランもさ、あの煙の中の悲惨で残虐な光景を少しでも映像にしてたら会場の笑いなんて冷め切ったんじゃないか。これじゃあ強めのアメリカンファーストキッズが増えるばかりよって正直思っちゃう。

てかそう、オッペンハイマー視点だからそりゃ当然だろってこと言うけど、一人称に託けて原爆投下への責任は何も描かれていなかった。自分は英雄か、科学者か、殺人鬼か。愛国心と科学の悪用に揺れる研究者、刃向かえば政府に潰される。みたいな、実話だから言っちゃあれだけど内容はあるあるじゃん。ノーラン監督は、なぜ今これを描いて、何を伝えたかったんだろう。きっとオスカーいっぱい取るから、そこで話聞けるといいなー
たんこ

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