このレビューはネタバレを含みます
作中の実験で「これは心臓に悪い」と主人公が言うシーンがあったが，本当に心臓に悪い作品だった．ものすごい密度と緊張感に3時間が一瞬に感じられた．クリストファー・ノーラン監督っぽいシーンや迫力のある音響が遺憾なく発揮されていたが，なにより，科学者たちの抑えきれない心情を映し出し，スクリーンいっぱいに出して視聴者に訴えてくる俳優の表情一つ一つがとても印象的．
全体を通して教科書に乗っている偉人たちが次々と出てきて，かつ物理，とりわけ量子力学の専門用語が，歴史が，知ってて当然かのように話されている．事前に勉強しておいて良かったと思うくらいには難しかった．それでも理論物理学が波に乗っていた時代や，共産主義の熱は感じられたし，まるで自分が現場にいるかのようなトリニティ実験のシーンは目眩を覚えるほどの没入感と緊張感．実験成功と日本との絡みは，吐き気がしそうなほど映像のパワーがすごかった．最後のアインシュタインの言葉が印象的．
なんというか，観たあとしばらく動けないくらい重いし，普段観る映画の「面白い」とはかけ離れた映画だけど，観てよかったと思う．友達と観に行かなくて良かった．
