はんそく負け

オッペンハイマーのはんそく負けのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5
ファースト・ショットの雨、林檎に垂れる青酸カリ、エミリー・ブラントの涙、フローレンス・ピューと浴槽等水というものが畏怖の対象として描かれている。というか落下するもの≒爆弾の象徴としてかもしれない。対して林は癒される(意訳)なんて発言があったが、樹木も上へ上へ伸びていくという点で爆炎を想起させもする(この映画では爆炎は確かに歓迎されていた)。上昇運動は知的探求として奨励され、落下は政治的な、制御不能なものとしてオッペンハイマーの中では区別されていたらしい。しかしラストでリフレインされるアインシュタインとの会話シーンでは、林も湖も一緒にフレームに入っているわけで、結局は表裏一体であった、ということを示しているように思えた。
聴聞会の最中エミリー・ブラントは「(私生活にまで言及されて)私たちの人生がズタズタにされていくようだわ」という発言をするが、これは伝記映画をやる上でのノーランの後ろ暗さなのではないか。人ひとりの人生をズタズタにして、なんとか3時間に収めたもの。映画という媒体の限界。後ろ暗さを感じるのそこ?とも思うけど。