ビンさん

オッペンハイマーのビンさんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
原爆の父と呼ばれた、天才科学者オッペンハイマーの姿を追った伝記映画。
監督はクリストファー・ノーラン。
まぁ、日本で上映されるまでには紆余曲折あったことは周知のことなので、あらためて書かない。

映画は冷戦時代、共産党員と親交があったってことで、赤狩りの公聴会であれこれ問いただされるオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)のエピソードを主軸として、自身の回想が挟み込まれていく、という構成。

しかも、過去のシーンはモノクロだったりする常套手段は、さすがノーラン、まったく無視してるので、ちょっと混乱するかもしれないが、キャラのメイクでそこは判断してね、という感じ。

伝記映画ではあるけれど、いつものようにIMAXで撮影しており、VFXを多用する内容でもなさそうだし、と思っていた自分は甘かった。
ノーランはオッペンハイマーの都度都度の心情の表現として、『2001年宇宙の旅』のスターゲイトみたいな映像を大音響を伴って放り込んでくるわけだ。
さすがノーラン、クーブリック信者であるのがよくわかる。

ここんところはやはり、IMAXで観るに限る。
ただ、そうまでしてオッペンハイマーに感情移入したいか、というと微妙なところではあるけれど。

話題となった広島、長崎のシーンが全く出てこないのは、映画はオッペンハイマーの心情を中心に描いているから、というノーランの弁は納得できる。
後に広島・長崎の惨状をオッペンハイマーが知る場面、そこでも直接的に惨状を画像として出さず、それを見るオッペンハイマーや他の者の表情で表現するのは、映画として優れていると感じた。

個人的には好きな俳優であるゲイリー・オールドマンがトルーマン大統領の下衆な部分をよく表現した演技を観せてくれたり、久々じゃないかマシュー・モディーンが出演していたり、そしてやっぱり本作がR15指定になった要因である、フローレンス・ピューのフルヌードがIMAXで鑑賞できたのは、何よりもスペクタクルであった、というこんなことを書いてる自分も相当下衆だけど。

編集と音響で3時間は特に長くは感じなかったが、アカデミー賞7部門受賞したことについては、そこまで・・・というのが正直な感想。
それは、ほとんどひっきりなしに流れている、アカデミー賞作曲賞を受賞したルドウィッグ・ヨランソンのスコアについても同じく。

それにしても、アメリカ映画って赤狩りネタ、好きだなぁ。
ビンさん

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