ビンさん

霧の淵のビンさんのレビュー・感想・評価

霧の淵(2023年製作の映画)
4.0
2年前の9月、なら国際映画祭でのプレミア上映後、ようやく一般公開となった本作、奈良県は吉野の川上村を舞台とした詩情あふれる逸品である。

そもそも敬愛する堀田眞三さんが、自身のSNSで川上村で映画の撮影をされていることを挙げておられて、作品の完成を楽しみにしていたものであり、なら国際映画祭では、監督の村瀬大智氏、主演の三宅朱莉さんはじめ、水川あさみさん、三浦誠己さん、堀田眞三さんらも登壇してのプレミア上映会(メーキング映像付き)には、いたく感動したものだった。

そしてようやく2年経って一般公開となったのは本当に嬉しい。
一般公開にあたって、プレミア上映時よりも20分弱長くなっているし、本作の音楽担当をされた『静謐と夕暮れ』の梅村和史監督からは音も手を加えた旨、教えていただいていたということで、いわば完全版という形で上映されることは更に喜ぶべきことである。

また、海外の映画祭での評価、東京での公開の評判も良くて、いよいよ27日には奈良県内の上映館を村瀬監督、三宅朱莉さんらが舞台挨拶行脚されるという運びとなったのも嬉しいこと。

過疎化が進む川上村で旅館を営む一家の姿を中心に、大自然の息吹とそこに住む人々の呼吸が独特の空間を形作っている様を映像で描く。

プレミア上映の際はホール上映だったが、やはり映画は映画を観る環境で鑑賞すべきもの。
今回、シネマサンシャイン大和郡山、ユナイテッドシネマ橿原、TOHOシネマズ橿原(ここのみ三宅朱莉さんの登壇なし)で、舞台挨拶有り上映が行われた。
いずれもいいシネマコンプレックスだが、個人的な感覚ではユナイテッドシネマが最も没入感が高いように感じる。

その中で観る本作は格別だった。
川上村の自然の描写はもとより、クライマックスの村の夜に多くの人々が集う幻想的なシークエンスで、その効果は発揮される。
映画を観ている自分も、あの集いの中の一人になっている錯覚に陥るのだ。
これぞ、映画館で映画を観る醍醐味である。

舞台挨拶では村瀬監督と、劇中よりも年月を重ねて、少し垢抜けた感のある三宅朱莉さんが登壇。
撮影時のエピソード等々、けっこう内容の濃い舞台挨拶で、劇中とは違い笑いも起こり、如何に撮影が和気藹々な中で行われたのだな、ということが伝わってくるものだった。
ビンさん

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