「風立ちぬ」は仕事と言いながら好きな世界に引きこもりたい空想映画で、かつ、作ったのは正々堂々の戦闘機。心まで負け切った国民は、自分の正義を直視する必要がなくなる、というカンタンな現状が成立させる作品ではありました。
一方、「オッペンハイマー」は勝った側だからこそ現実世界の汚さや葛藤を描き、遂には原爆投下の評価を覆えそうとする作品も出せる余裕があるのかなと。
日本で絶対に作れないのは、日本の正義を語りきって、勝つべきだったし次は勝つぞという映画、なのが現状ですからね。
負けた側が自分の正義を語るには勇気がいるんです。
ちなみに
原爆投下は戦争ではなく、戦争のルール違反である民間人大量虐殺なので
「戦争反対」のネタとしては使えないモノです。
むしろ「戦争はルールを守ってやる力勝負で、ある種の人類の知恵」であり
「アメリカが人種差別によってその知恵を踏みにじった事例」
という話になります。
零戦も真珠湾攻撃もあくまで軍人同士の戦いで戦争のルールは守っている一方（宣戦布告は必須ではない）
原爆も東京大空襲もフライングタイガースも明確なルール違反で、それらを「戦争」だと認識させること自体が「戦争なんだからどんな酷いことも仕方ない」という「最悪を受容させる」ことへ繋がります
戦勝国の「オッペンハイマー」が当然のこととして整理できているこの事を
日本人がまだ整理できていないのは、根深い洗脳と言えそうです
