ベタレイヤーテール

オッペンハイマーのベタレイヤーテールのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1
最初から終始サスペンス調の緊張感ある演出と展開で、180分の長尺だがあっという間で目が離せなかった。米国で初めての原子爆弾の開発リーダーとなった天才科学者の、前半は科学への探究心ばかりでの率先した研究開発の過程と(リーダーだから人事面が多い)、それからの実際に戦争で使うという事態が近づきさらに使用された時の、倫理についても意識せざるを得なくなってくる葛藤・心理を克明に描くことに成功していて、逆に言えば単純に戦争や核兵器反対もしくは米国映画だから正当化の政治的映画でも無い脚本には恐れ入った。なお、物理学(量子論)の難しい話しはほとんど無いが、それがある時は難しく無い説明になっていて面白いシーンになっている。
そして核兵器開発され実際に使用することについて作戦が擁立されるが反対の気持ちも登場人物たちにもあり、それが達成されたら科学者として理論が実証されたことへの喜びもある。これについて視聴者としては一体どっちの主張をしたい映画なんだと批判もしたくなろう。
が、これは一本筋の単純な映画ではなく、主人公の伝記的映画でもあり周囲の科学者や政治家、それを支えた女性たちの物語でもあるのでいろんな意見や立場が表明される。その点、主張はさまざまであるが、それがリアリティでもあり結論が無いからこそ後味がずーんとのしかかるように残り、作品の風格を増している。そう、風格のある映画だ。クリストファー・ノーラン監督らしいと思った。
最後に、一部のシーンはやはり日本人として見るのは相当つらい、憤りがないわけでは無い、それを抑えるのも難しかった場面もある、それも印象に残ったのは正直なところだ。