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オッペンハイマーのはるのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
三時間と長尺ではあるが、さくさく進むので苦ではなかった。公聴会がメインになってくると、誰の話をしているのか分からなくなり「?」となることもあったが、事前にwebの記事を読んで予習していたせいか、誰が好意的で誰が敵対意識を持っているのかは分かったし、そのために何が起きているかは何となく分かった。ストローズがオッペンハイマーのことを好きになれなかった理由も、冒頭の数分で分かって「そら嫌われるわ…」と思うなどした。

オッペンハイマーは民間人を含めた数多の人を死傷せしめ、後々も後遺症で苦しめたという事実よりも、自分たちを含めた世界そのものを破壊する力を人類の手に握らせてしまったこと(自分とその家族も原爆の被害に遭うかもしれないこと)を恐怖しているなと感じた。広島で育った人間からすると苦い感情はあるが、でもまあ、アメリカ人からするとそんなものだろうという気もする。どこに原爆を落とすべきか議論しているシーンがあったが、あそこで「東京空襲で民間人を含む十万人が死んだが国内では誰も批判しなかった。国民が慣れていることが怖い」というセリフがあり、非常に印象的だった。また、「京都は文化財が多くあっていい街だから止めておこう」みたいな会話があったことは知ってはいたものの、ああして実際に笑いながら俳優がセリフを発するのを見ると、改めてグロテスクだと感じて顔を顰めてしまった。

オッペンハイマーの功罪を良くも悪くも淡々と描けたのは、クリストファー・ノーランがイギリス人だからではないか、という気はした。ノーランがアメリカ人か、原爆を落としたのがアメリカではなくイギリスであれば、ノーランはこの映画を作らなかった、あるいはこういう作風では撮れなかったのではないか、とぼんやり思った。確かめようもないことだが。
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