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オッペンハイマーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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☆俺基準スコア:3.1
☆Filmarks基準スコア:4.1




1920年代。留学先のケンブリッジでボーアと出会ったことで理論物理学へ傾倒し、ドイツ・ゲッティンゲンで量子力学のエキスパートとなったロバート・オッペンハイマー。アメリカに戻った彼は、1930年代後半にはバークレーで物理学の教授となっていた。同僚のローレンス教授らと親交を深めながらも、労働者の権利やファシズムに抵抗する共産主義者たちにシンパシーを抱くようになる。そして1942年。ナチスドイツの核開発を懸念したホワイトハウスが立ち上げたマンハッタン計画に参加。陸軍少将グローヴスとタッグを組んでロスアラモス実験場を切り盛りし、ついに原子爆弾の開発を成功させる。終戦後もプリンストン高等研究所に籍を得て原子力委員会で原爆・水爆についての提言を続けていくが、1954年、突然の「聴聞会」で過去を晒されて、機密アクセス権を剥奪されてしまう…


1959年。商務長官任命のための「上院公聴会」で、原子力委員会トップを務めたルイス・ストローズは、「赤」のオッペンハイマーをプリンストン高等研究所に招聘した責任を指摘され窮地に立たされた。ストローズから見たオッペンハイマー像をリークしながら味方の科学者たちに証言させ、なんとか閣僚入りを果たそうとするストローズだったが…



「オッペンハイマー」



我は死なり、世界のネタバレ者なり。



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ノーランの作風を知っていれば、妙に腑に落ちる作品。専門用語と人間オッペンハイマーの複雑な心情と時制解体演出で延々と観客を混乱させ、結局はシンプルかつ普遍的なメッセージで着地するという、いつもの手口でした。なんだかんだで最後が胸に刺さるから許してしまうけど、毎回これに付き合わされる方はたまったもんじゃないよ^_^

「歴史に名を残した男」オッピーを「歴史に名を残そうとした男」ストローズが失墜させようとする構図はどうしても「アマデウス」を想起させるけど、結局ストローズも「のちに歴史に名を残す男」の手で失墜させられる皮肉はよりドラマティック。ダラスの犯人はもしかしてあんたか?と訊きたくなるほど、ダウニーJr.怒ってたな。

それにしても、近年稀に見るオールスターキャストでしたな。常連とはいえ、科学研究局のマシュー・モディーンが目立つと思えば陸軍長官役でジェームズ・レマーが出てきて、トルーマン大統領はゲイリー・オールドマンですよ。ある意味これは「エクスペンダブルズ」級。聴聞会の嫌味な検察官的野郎ロッブはジェイソン・クラークだし、眼鏡の腹黒中佐ニコルスはデイン・デハーンだし、不気味なバッシュ大佐はケイシー・アフレックだし、ローレンス教授はジョシュ・ハートネットだし、マンハッタン計画シカゴ組のヒル博士はラミ・マレックだし、止めのボーアがケネス・ブラナーだもん。いないのマイケル・ケインくらいじゃない?


難解さに怯まず、凄まじいビジュアルと豪華キャストの共演、メインたちの名演、そして核の存在について自分なりに思いを馳せれば充分堪能できたと言える一本。アインシュタインの出てくるとこだけ集中していれば、ラストもエモな余韻に浸れます。ぜひ。
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