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オッペンハイマーのhirobeyのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
アカデミー賞7部門受賞のクリストファー・ノーラン監督の最新作。

"原爆の父"と言われるアメリカの物理学者オッペンハイマーの成功と苦悩を描いた伝記ドラマ。

原爆を作るまでの物語と、その後の公職追放に関する物語を、監督得意の時系列バラシに加え、更にストローズとの対立軸で描いている。

個人的には、「TENET」よりも初見で分かりやすかった。ただ、絶対にもう一度、劇場で観たい!という衝動に駆られている。ここまで、もっと深く作り手の意図を知りたいと思った作品も少ない。

これほどの作品にも関わらず、アメリカ上映からかなり時間が経ってからの本邦公開。やはり、テーマがテーマだけに調整が必要だったのだろうと思わずにいられない。十分に反戦映画であったと思うのだが、一方で仕方ない部分も分かる。

単純に、"マンハッタン計画"での原爆完成に向けての実験シーンが最高に盛り上がる。しかし、個人的には、モノクロで表現されたストローズの公聴会と、カラー表現のオッペンハイマーが受けた聴聞会の経過に惹かれた。ここに、キーとなるアインシュタインとの会話や、時代背景となる共産主義に対する"赤狩り"が絡む。

実際に原爆が使われた後は、英雄視されながらも苦悩するオッペンハイマー。ただ、この時代、ドイツや日本でも原爆を研究していたのだから、彼でなくても必ず誰かが完成させたはず。そして、作中で彼の言ったとおり、作ったものは使用するという人間の愚かさにも同意。今日、隣国は今年3回目の飛翔体を日本海に飛ばしているとのニュース。そして、終わりの見えない中東やロシア・ウクライナ戦争。いつか、地球規模の核兵器が使われないと誰が保障できようか。

俳優陣は文句無く素晴らしかった。個人的には、妻キャサリンを演じた「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラントが印象的だった。特に最後の口元など。

いろいろ書きたいが、後は、もう一度、鑑賞してからにしようか。

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2024.4.6
再鑑賞

3時間の長さを感じなかった。白黒とカラーの意味を分かって初めから観たので、特にストローズパートはとても分かりやすかった。やはり再鑑賞が正解。また、音がとても効果的なことも分かった。

昨年のエブエブは、理解に苦しむところもあったが、本作のアカデミー作品賞受賞は十分に納得できる。

田舎なので、IMAX鑑賞のハードルが高いのが、つくづく悔やまれる。
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