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オッペンハイマーのtamita3のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
現在最高の監督の呼び声高いクリストファー・ノーラン監督最新作「オッペンハイマー」観てきました。
いやー凄いとは簡単に片付けられない程凄い映画でした。
「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマーを描いた伝記映画。
伝記ものとしてはダントツのトップ。
今年観た映画の中でもダントツでしたね。
映画の良し悪しはキャスティングと脚本で決まると某有名監督が語っていますが、キャスティングも凄い俳優が集まっていました。

凄い監督の元には凄い俳優が集まる!
J・ロバート・オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィーが素晴らしかったのはもちろん、その妻役のエミリー・ブラントも良かったです。
個人的には悪役のルイス・ストローズを演じたロバート・ダウニー・Jr.とアメリカ陸軍の将校を演じたマット・デイモンがとても良かったです。
実験物理学者アーネスト・ローレンスを演じたジョシュ・ハートネットはあまりの変わりっぷりに最初本人だと気づかずw
ケネス・ブラナーはノーラン映画の常連となりつつあり嬉しい。
アカデミー賞で主演男優賞を受賞したラミ・マレックが序盤ちょこっと出演。
まさかこんなちょい役でアカデミー俳優が使われるのか-と驚いていたら後半超重要な役として再臨。そうですよねアカデミー俳優がこんなちょい役で終わる訳ない。
監督のキャスティングが1番光っていた瞬間でした。トルーマン大統領役でのゲイリー・オールドマンのちょい役での出演も忘れてませんよ笑
この人チャーチル役もハマってましたがお偉い役がよく似合う。

さてキャスティングはこの辺にしてストーリーに移りたいと思います。

まず驚かされたのは音響のど迫力感。この音響がオッペンハイマーの心理描写した映像と見事にマッチしていて凄かったです。
これは映画館でないと味わえない体験なので興味を持った方は是非映画館へ。

ストーリーは序盤はオッペンハイマーの青年期を描いていますがピカソの絵が映し出されたり、ちょっと文字まで読めなかったのですがレコードが映し出されたりと物理学者(オッペンハイマーは理論物理学から量子物理学)はいろんなものから刺激を受けて理論を作っていくんだなーと感じさせられました。

そしてストーリーはオッペンハイマーの生涯を順行、その合間合間にソ連のスパイ疑惑を持たれたオッペンハイマーが追求を受ける聴聞会(オッペンハイマー事件)の様子が描かれ、この2つの時系列が交差する手法はノーランならでは‼️
今回は結構重いテーマを扱っている為かオッペンハイマーの心の葛藤が強く表現されていたと思います。

でストーリーはストローズがロバートをプリンストン高等研究所の所長に抜擢した後、水辺で何やらロバートと話す男性の姿が映し出され、すぐさまロバートを後に険しい表情で去って行く男性。この人はすぐアインシュタインだとわかりましたがこのシーンがラストの重要な布石となってきます。

個人的に観ていてそうだよなーと共感できたのは「理論には限界がある」という言葉ですかね。理論に限界があるから科学者達はその理論を証明する為に実験する訳ですが今回の理論は良いとして実験には戦争が強く絡んでいるからよろしくないと感じましたね。

またアメリカがいち早く核爆弾の製造成功に至ったのはナチスの政策(反ユダヤ)が強く影響していたことも忘れてはいけないでしょうね。
ユダヤ人(ロバートもユダヤ人)の優秀な科学者達が相次いてアメリカに亡命しなければドイツの方が早く原爆を製造していた可能性が映画では示唆されています。そうなっていた事を考えただけで恐ろしいし、まだアメリカで良かったと比較すると感じちゃいますね。

ストーリーはというと中盤に最高潮を迎え原爆実験成功という今考えると悲劇とも思える瞬間を迎えます。

この時点でナチスドイツは降伏しており果たして日本に対して使用すべきかという議論が起こります。
しかし本土決戦やむなしと考えていた日本は絶対降伏しないという軍の方針から広島、長崎に2発の原爆が投下されてしまいます。
この辺りが日本公開が遅れた原因だと思いますが決してこの映画は原爆製造使用までの過程を克明に描いていますが、決して原爆を良しと描いていない事は観た方ならわかると思います。その辺りはオッペンハイマーの苦悩で十分描かれていますし別に同時公開で良かったかなーと個人的には感じました。

さて終盤物語はオッペンハイマー事件が描かれます。
オッペンハイマーはその後の軍拡競争に否定的で水原実験にも反対的な立場をとっていた為一部の人間から批判を受けてしまいます。(首謀者はルイス・ストローズな訳ですがここは序盤〜中盤でわかってしまう為あえてネタバレにはしませんw)

この聴聞会で個人的に好きなのはレズリー・グローヴス将校の発言ですね。
核爆弾製造の過程で何度もロバートと衝突を繰り返していた彼からロバート擁護の発言が出てそれを演じたのがマット・デイモンというのが激アツでしたね。
やはり人は長く一緒にいればいるだけその人の本質というものがわかるんだろうなーと感じた場面でした。
このオッペンハイマー事件はどういう結末を迎えたのかはここでは書きません。それこそネタバレになってしまうので💦

ストーリーもラストシーンに突入。
ここであの冒頭アインシュタインとの会話がどのようなものだったのかが描かれます。

個人的にはオッペンハイマーはこの時点で既に世界は破滅へと向かうという考えだったのがわかります。

ここからは感想です。
ノーラン監督があまり好んでCGを使わない事は知っていたのでマンハッタン計画の実験シーンは一体どんな映像を見せてくれるのかが個人的には1番の見所でした。
ここは期待を裏切らない映像で凄かったですね。
後序盤のロバートの脳内映像と音響のシンクロ率が高すぎて驚かされました。
後最初にも述べたとおり映画はキャスティングと脚本で良し悪しが決まるので全てにおいてパーフェクトでしたね。
ストーリーは伝記なのでそこまで期待してなかったと言ったら嘘になりますが、ソ連のスパイじゃないかと疑われて下手すると陰湿な映画になっていたかもと感じる所をここまで3時間飽きさせる事なく没頭させる監督はやはり天才なんだと確信しました。

以上普段滅多に長文は書かないのですが今回はこの興奮を伝えたくて頑張って書いてみましたw

追記
アカデミー賞発表されてたみたいですね。
オッペンハイマー作品賞‼️
キリアンマーフィー主演男優賞‼️
ロバート・ダウニー・Jr助演男優賞‼️
クリストファーノーラン監督賞‼️
更に撮影賞と作曲賞、編集賞を加え全7冠初のノーラン監督作品賞受賞に私も更に興奮しておりますw
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