えだ

オッペンハイマーのえだのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.4
2024-16作目。映画館IMAX鑑賞。
結果的に海外で先行上映されていた本作は例のバービーネタ画像で知りました。その時はノーラン作だとは知らず、半年後くらいに映画館予告で知ってびっくり、ノーラン作じゃければ見てなかったかもな。

相変わらず時系列に混乱するシーン切り替えが多発します。普通モノクロシーンは時系列で言うと過去だったりする先入観も裏切られました。あのシーンをモノクロにしたのは、他シーンと比較してオッペンハイマー本人の信念・気持ち・血が通っていないままに進む、ストローズ視点での政治的思想が絡んだ結果をただ淡々と見せていく意図があったのかなぁ。

毒リンゴを仕込んでおきながら最後の最後で罪悪感や良心によって慌てて捨てる様は、その後のオッペンハイマーの人生を端的に暗喩してたのかもしれません。

裸になって不貞を認めたシーンも印象的でした。到底美談にはできませんが、奥さんは相当強い人でしたね。

最後まで観てみて、反戦映画でもオッペンハイマー賞賛映画でもないと思いました。また勝戦国視点でもなく、オッペンハイマー視点での苦悩を伴う回顧録、のような理解をしました。今世界で起こっている軍拡競争という名の連鎖反応。日本に原爆が落ちて成功を喜んでるシーンと、最後に現世界の暗喩で核ロケットが飛びまくってたシーンと、海外の観客はどんな気持ちで観たんだろう…。トルーマンの言うように、オッペンハイマーを泣き虫男だと捉える人もいるんだろうか。

IMAXで観た意味はありました。冒頭付近の中性子軌道?エネルギー?を表現したようなシーン、オッペンハイマーの演説シーンの足踏み、そして特にトリニティ実験シーンでの映像&音響が素晴らしかった。ノーラン監督が言う、映画はコンテンツではなく映画館で体験する芸術だ、という意図がわかりました。

そして、当たり前のように豪華俳優陣がどんどん出てきて豪華でしたね〜。ゲイリーオールドマン気付きませんでした!笑

基本的には会話劇中心なんですが、それで3時間も、引き込まれ続けました。史実系の映画は、映画ならではの奇想天外な非現実感が感じられない点で相対的につまらなく感じてしまう派ですが、本作は観ておいて良かったです。好みではなかったけど、傑作でした。
えだ

えだ