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オッペンハイマーのzenのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
19

間違いなく人生で衝撃を受けた映画の内の一つになった。
ただ、内容が内容なだけに「面白い」とか「興味深い」とかそういうエンタメ的感想を向けていいのか難しい。
ノーラン監督が「観客には3時間、耐え難いジレンマに挑戦してもらう。」と言っていたが、正にその通り。
このジレンマを自分の中で飲み込むのは本当に時間がかかった。

まずはトリニティ実験までに至るシーン。
映画としては本当に面白いし、これが実際に行われてたと思うと、どれだけ戦争が逼迫していて、原爆が鍵を握っていたのかが実感できる。更にオッペンハイマーという人物像もよくわかり、彼の心情に没頭できる。

そして人類初の核爆発実験、トリニティ実験のシーン。
CGを使わないノーラン監督が手掛けた本気の爆発シーンは久しぶりに心臓がバクバクする感覚があったし、前半で主人公達と同じ目線で実験の成功と失敗を期待していたから、感情としてはそこにいるみたいだった。

ただしここの実験シーンの直後からジレンマの葛藤が始まった。
俺達はこの実験の成功の意味も、それがどれ程辛いものかも知ってる。だから、実験の成功でみんなが喜んでいたシーンは本当に複雑な心境だった。

原爆が日本を降伏させるきっかけになったのは間違いない。
日本が降伏した事でアメリカ兵の命が多く救われたことも理解できる。だから原爆は「戦争を終わらせた」物として一部神格化されたようなことも、オッペンハイマーに対するあの賞賛様も理解できる。
目の前の出来事は筋は通っているし理解はできる。
ただ大勢の命を一瞬にして消したあの原爆をどうしてもそんな風に見ることはできないし、賛成もできない。
その映画の様子に本当にある意味の恐怖を覚えた。

ラジオと伝言でしか入ってこない戦争の被害の様子は映像では決して映されない。けれどその悲惨さは容易に想像できるし、映されないからこそ、そこのジレンマに立たされる。

そして後半戦、ここからはオッペンハイマーの伝記映画として本当に素晴らしかった。研究に翻弄され、自分の作ってしまったものに翻弄され、時代と政治に翻弄され。彼が最後まで自分のしてしまったことの罪悪感に苛まれてるのがよくわかった。

3時間、一瞬たりとも気の緩みも許されない映画だった。この物語のジレンマには是非みんな立ち向かって欲しい。考えて考えて自分なりの答えを出して欲しい。

すごく体力の使う映画だったからもう一回観る勇気はないけど、確実にもう一回観たいと思う映画ではあった。

。。。。

個人的に最後のエミリーブランドカッコ良すぎたし、ロバートダウニーJr.の立ち回りも面白かった。
アインシュタインとオッペンハイマーの関係性も絶妙だったし、あの会話を最後に持ってくるのも上手いなぁって思った。
それから俳優陣豪華すぎて、もう、、なんか凄すぎこの映画。
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