赤苑

オッペンハイマーの赤苑のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.4
デカスクリーン・デカ音響で上映してるうちに観れて良かった。"映画"依存の映画な感じがしたから。熊本だとIMAXやってなかったからなるべく大きいところで観たかった。2/3ぐらいの実験のシーンのクライマックス、あそこ緊張感えぐくて爆音身構えてたんだけど、でも敢えて抜いて、ずらして、だったのは一本取られた感じした。とにかくこのシーンだけでも映画館で観る意味が果てしなく大きくて、画面一杯から十分すぎるほど"恐怖"が伝わる。オッペンハイマー個人の呵責の念の凄まじさも、投下直後のスピーチのシーン、小さな部屋で詰問されるシーン、随所でのフラッシュバックと音楽が、最大限に活きている。栄枯盛衰と対応したカラー、モノクロ画面のメリハリも然り。
内容に関しては、まあ観る前も観た後も正直そんなに感想は変わらなくて、これが日本で公開延期されたのも、世相だなぁって感じ。確かにテーマだけ切り取ると日本人にとってセンシティブではあるんだろうけど、"戦争"に付随するあれこれに対するノーランの解像度けっこう高くて、あぁこれは日本人が観るべき映画だなぁと思った。いわゆる戦時中の熱が狂気的に高まっていくあの感じと、恐ろしく早いスピードで冷めていくあの感じ。"戦争"として鳥瞰すれば、あの頃の日本と全く同じだった。一方向の善悪の矢印が、ふとした瞬間に逆向きになる時代の波に翻弄された一人の人間オッペンハイマー。今やる映画として、"正しい"フォーカスの仕方だと思う。だからこそタイトルバックも引き立つし。
あと、「直接的に原爆の被害を描かないこと」だけを理由に否定してる人には、『戦場のメリークリスマス』から見直すことをおすすめしますね。映画でも小説でもなんでも、ある事実をただ描くか描かないかの取捨選択よりも、それを肯定的に描くか否定的に描くかの方が、余程重要なこと。当たり前だけど、描かないことで、かえって強調されることもある。
尺に関しても180分と長めだったけど、やっぱり面白くてあっという間だった。語りの形式として、誰もが共有認識としてある結末があって、回想しながら話がドライブしていく形式が持つ推進力の大きさを、実感する今日この頃(フリ●レンでも思った)。まぁ3時間近い尺も、映画館で観てもらうのにこだわったつくりも、最近のトレンドって感じだし、この内容で"面白い"ハリウッド映画の仲間入りしてるのがもう面白いので、一見の価値は間違いなくアリ。
赤苑

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