チャリお

オッペンハイマーのチャリおのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
オススメ!


音楽がとても印象的な使われ方をしていた

映画における音楽やBGMは一般的に、場面を盛り上げたり、感情を伝える為の補助的な役割であることが多いかな?
あくまでサブとゆーか添え物

高級なホテルやレストランで音楽があれだけ大きいと絶対に主役を邪魔するしうるさい
だがこの映画では、そうはなっていない。
おそらくだが、オッペンハイマーの感情や心象、その情景を語る装置として役割が与えられている様に感じるほど音楽の役割が強い
通常なら無音→BGM→無音で波を作るからこそ映えるところを、5〜6割の場面で鳴っていたという感想さえ思い浮かぶ。
また、バイオリンの弦の高いキーっという音が多く主張がだいぶつよい

音楽が止むのは、恋人とのセックス(ふつうこういうシーンほどBGMかかるよね)や、家族とのシーン、仲間の研究者や信頼できる友人とのシーンな気がする。穏やかさとか日常のBGMってなかったと思う。

科学者オッペンハイマーの場面はうるさいほどの音楽で、ひとりの人間としてのオッペンハイマーの場面は無音だった気がする


音楽の主張が強めだが、オッペンハイマー自身は感情や表情を分かりやすく出さない。
むしろ少ない。特に喜びに関してはほとんどなかったのではないだろうか。


あえて、鏡に…マネキンに徹している演出なのかな?
見るものの解釈や感情を湧き立たせる見る人によって感じ方の異なる表情だなぁと。

その分見る方感じた事や言いたくなる気持ちは積み重なってくるのだが、いいタイミングで、友人や科学者、恋人、が感情を言語化したり意見を代弁したりしてくれて少しスッキリする🤣
特に夫人の叱咤や強い感情の表現してくれるからこそ、鑑賞者は逆に中立でいられるのかな。笑


映画館が終わった後、近く出来たやたらとオシャレなカフェの、やたらとキレイでスタイルのいい定員さんから、この映画が賛否両論だと聞いて驚いた。否の意見ってなんだ?と
思ったし、3時間とは思えない体感の短さ

やたらとフルーティなアメリカーノを飲みながらこれを書きながら考えてみると少し納得できる


核の怖さをやたらと描写するわけでも、核や使用を正当化するわけでもない。

マネキン的…鏡のような映画の特徴が、観たものの感情を意見を映してくるのかもしれない。
その為、感情の揺れや一種の気持ち悪さや、飲み込めなさなどを生むし、
賛否両論を生むのではないだろうか。

この映画は決して反核とかオッペンハイマーの感情に共感してもらおうと作ってはいないと思う。
強い反対論者がみてもオッペンハイマーやアメリカに対しての態度は大きく変わらないだろうし、核擁護派が見ても意見は変わらないだろう。
この映画を観たあと味を確かめたくなる、どう感じた?と共有したり、意見を述べたくなる、考えたくなる、
そんなたまらなく人の心に波紋を作る作品だと感じた。

その時点で監督や俳優陣の作戦にまんまとハマっている様に感じたし、作戦は成功していると思う。

1日本人としては、広島や長崎の被害も映すべきという意見は分かる。そこを扱う難しさから逃げたなという印象を受ける人もいるかもしれない
が、私個人としてはそういった苛烈な表現をしてしまうとやはり見ようと思う人を減らしてしまう。


偉大な発明家なのか、破壊の力の創造主か
スパイなのか、国の英雄か
アカなのか、忠実な市民か
「あなたの意見は
(核推進なのか、核軍縮か)どっちなんだ」
と、両極端なyes or noがオッペンハイマーに問いかけられるシーンが多かった様に思う

あれは鑑賞者へのメッセージなのかな。

そしてオッペンハイマーは劇中そこにはハッキリした答えやスンタスは示さない…

世の中アカシロで判別できないものの方が圧倒的に多い。
核の議論にしても、もう人類は自らを複数回滅ぼして余るほどの力を持ってしまっている。
その中で何を感じ、何を語るのか…そんな鑑賞者に問いかける映画に仕上がっていたと思う。
チャリお

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