ハーゲンダッツ村上

オッペンハイマーのハーゲンダッツ村上のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1
ノーランっぽい伝記映画だった。
この人は本当に時空間をイジるのが好きというか、シーンごとの時間軸をズラすことによってドラマに力を持たせるのが得意なんだなって感じ。

基本的には良かったと思う。ドラマも楽しく作ってあったし、ノーランらしい密度の高い計算されたシーンの連続だった。
この人はやっぱりシーンを完璧に作り込んでるよね。
設定の説明、人物関係の説明、ドラマの演出。そういうのを無駄なくきめ細やかに詰め込んで綿密にシーンをつくってる。

それが伝記映画としてのリアリティや実際の人物に対してのリスペクト、そして映画としての商品的価値つまりドラマ性の面白さ、全てにマッチしていて良かったと思う。

個人的にはノーラン監督の作品は嫌いな作品もあって、綿密にシーンをつくってる、または頭のいい作品であるために、ドラマ性の淡白さを感じることがある。

もちろんシーンをちゃんと見ればドラマ性をしっかり配置してるんだけど、どうしても急ぎ足すぎるところがある。または急ぎ足にすることで盛り上がり、緊迫感をつくるところがある。だからドラマの余韻、余白感を感じる時が少ないって感じる。

この作品もやっぱり急ぎ足で、ドラマ性を呑みこむための余白は感じられなかった。けど冒頭に言ったような時間軸の演出とドラマの起承転結が非常にマッチしていて、納得感をとても感じられたのが好感。

ラストにとても力強いドラマの帰結があることで、まさに終わり良ければ全て良しな映画だった。


後思うのが。
この映画のラストで示される主題。
アインシュタインが喋ってるとこ。
それに対し強く反対する大切な存在が、オッペンハイマーの奥さんだったと思うんだよね。
この映画で示される女性関係は、ドラマに深みを出す重要な要素だった。特に奥さんがそうだった。でもそこらへんの描き方がちょっと淡白だった。
もう少し奥さんとの関係に尺を割いて欲しかった。


良かったと思う。まぁでもちょっと淡白だったかなぁ。起こってることはわかりやすかったけどね。
事前知識は必要だと思う。ある程度史実を知っていてその上で見る映画。
伝記映画は作るのが難しいし、ヒットさせるのが難しい。そこのところ、今作はノーラン節が上手くマッチしている良作だったと思う