紅しょうがスペシャル

オッペンハイマーの紅しょうがスペシャルのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
この映画が日本で公開されたら必ずみようとアメリカでの公開時から思ってました。

結論を申しますと、映画的に素晴らしい作品であったことはもちろんですが、何よりこの作品がオーディエンスに対して与えようとしてしている力の強さに(さすがクリストファーノーラン、)と感動しました。

広島長崎の悲劇については日本人であれば必ず考えたことがあると思います。
しかしこの映画を観るにあたり、自分は「原爆を落とされた国の子孫であること(原爆投下への特別な憎悪)」は忘れて鑑賞しようと思っていました。

オッペンハイマーの政治的な思想からくる研究の大義とはどんなものであったのか、そこの描写を合理的かつ道徳的な視点で考えたいと思っていたからです。

個人的に物理の内容自体はわからないのですが、哲学的(倫理学的)な視点で鑑賞するにはもってこいの作品でした。

開発者や原爆使用を決めた政治家たちの心理や道徳、科学の理論と実践の間で奮闘する科学者たち…しかし最終的にはその実践可能であることがもたらしたオッペンハイマーの葛藤と周囲の人間との闘いが(俳優陣の素晴らしい表現力のおかげもあり)細かく描かれていました。


対ナチスを標榜したマンハッタン計画だったけれど、結局のところ開発したものを殺戮兵器としてアメリカは実際に使してしまったわけです。
オッペンハイマーには罪悪感がいくらかあったようでしたが、現在でもアメリカ市民の約半数が広島長崎の原爆投下が正当であったと考えているのが現状です。
ナチスの過ちについてはあんなに口をうるさいのに、原爆に関してアメリカは反省したところでなんだってんだって態度です。勝戦国だからしかたないのかもしれないけど…アメリカが咎められていない反省してない点は映画をみながらさらにモヤモヤしました。
(結局日本人としてそこはどうしても感情的になってしまった…)


以下は蛇足です
だいぶ昔にハンナアーレントという映画をみました。彼女はホロコーストで責任者をしていたアイヒマンが戦後に裁かれ、その裁判を通して鑑みたアイヒマンについて倫理学的にインパクトのある著作を残しています。アイヒマンは"国家の忠実な駒であっただけだった"けれど、裁かれたわけだ。
「ハンナアーレント」をもう一度みてみようと「オッペンハイマー」をみながら考えていました。

紅しょうがスペシャルさんの鑑賞した映画