明日

オッペンハイマーの明日のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.7
映画を通して感じたことは、どれほど優秀であっても所詮は人間で完璧な人はいないということ。人間は間違う。どれだけ正しくても。結果によっていくらでも愚かになる。ただそれもどの角度から見るかによる。

オッペンハイマーというタイトル通り、個人を描いた映画だった。
構成としては、最後本人がどういう思いに苛まれるかを表現するために逆算して必要なシーンが散りばめられていたようだった。
キーパーソンとのやり取り、言動。それと並行して最後の時点での証言が入ってくる。初見では把握に必死。

NHKの映像の世紀見てなかったらちんぷんかんぷんだったな…。せめて見ておいて良かった。
見比べて見ると、実際の映像の博士の方が後悔に苦しんで余生を過ごしていたように感じた。つまり映画ではそれほど苦悩が伝わってこなかった。

2-3万人と見積もっていた死者は2日間の当日で11万人、その後も合わせると22万人だった。それでもアメリカは犯罪ではない。下した政府も作った科学者も。勝者が正義だなと感じる。
政府や軍人や長官がドイツに落とす代わりに日本に落としたことは、いくつか理由はあれど正統化してはいけないと思った。

広島も長崎もセリフにしか登場しない。残虐さは報告を受けた登場人物の表情からしか読み取れない。
歴史として知られている映像はあえて使ってないんだろう 見てショックを受けることで博士本人を描くのが難しくなるからな気はする。

とはいえこの映画の目的はなんだ
個人の物理学者が世界を変えてしまった影響力の事実、いくつかの人間の判断の誤り、後悔先に立たず。
現代で素晴らしいとされる技術にも誤りはあるという警告かなと思ったけど反戦反原爆を掲げたいわけではないし、解釈は個人に委ねる…というのはもやもやする。

核爆弾の恐ろしさよりもそれを作った落とした人間、未来ではなく今の利益を優先する愚かさ…とかは私が感じたところ。

けど、核爆弾の恐ろしさってどれぐらい伝わるんだろうか。どれだけ人類の後悔の対象として映るんだろうかはやや疑問があった。
実感がない世代が増える中で、これを見てもピンと来ない人も多いんじゃないかって。ほんの少しの科学者の後悔した様子だけで、アメリカにとって新しい核爆弾の映画と評価されているのであれば、あまりに日本との温度差は大きいと思った。

ノーラン監督のこれまでの映画は大好きだし、日本とアメリカとで捉え方の違いが表面化することを考えると作られる価値はあったんだと思う。けど何か価値観に変化をもたらすかというとそうでもないと思うし、それは期待しすぎなのかもしれない。何を感じるかどうかあなた次第な中で今後何かが変わるんだろうか。

意義はあるけど繰り返し見たくはないかな。一回でいい。好きでも嫌いでもない。

最後に、キリアン・マーフィーの演技はよかった。マット・デイモンはやっぱ好き。ロバート・ダウニー・Jrは先日の件があってから役に拍車をかけて嫌味を感じた
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