のっぺりじゃない、ノーラン監督らしい堅実かつ目まぐるしい作品だった。
ルイス・ストロースが、オッペンハイマーをプリンストン研究所の所長に誘うというところから語りは静かに始まる。
そこから時間軸は主に三本に分かれ
・オッペンハイマーが原子力爆弾実験を成功させるまで
・ルイス・ストロースの公聴会
・オッペンハイマーの聴取会
が何度も切り替わる。
最後は最初に登場する些細な疑問の解決で締めくくるのだが、それがもう強烈な言葉だった。
ドキュメンタリー的手法で役者さんに自由な演技をさせて撮影に挑んだときいていたので、長回し撮影が多いかと勝手に勘違いしていたのだが、全く違った。
むしろ役者さんの迫力はそのまま、映は細部までこだわりを感じる切り貼りが多く、これぞ映像(映画)の醍醐味と感じた。
テンポも申し分なく3時間はあっと言う間。
あと音楽のルドヴィグ・ゴランソンさんの手腕はいつも驚かさせる。個人的にはハンス・ジマーさんだとこってり味つけになりがちな印象なので、TENETに続くタッグは非常に好ましかった。
意外とオッペンハイマーの人生と、大作と呼ばれる映画作りには少し似ているところもあるんじゃないだろうか。たくさんの人の興味、陰謀、憧れに揉まれ生まれるものの畏怖を感じる。