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オッペンハイマーのnemnemのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
IMAXでの特撮に拘るストイックな映像主義でありながら、今までエンタメしか撮らなかったノーランの初の社会派作品。

伝記映画にも関わらず、ノーランお得意の時系列シャッフルで、聴聞会編、公聴会編、核開発編が交互に入り組み、かなり忙しない。
パート毎にフィルムの色調を変えて分かりやすくする工夫はあるものの、登場人物が非常に多い上、シーンの9割が室内での会話なので、一部冗長で退屈な感は否めない。(特にストローズの公聴会)
ノーランの何でもかんでも時系列を弄り回したがる癖は一体何なのか。

それでも、この時系列シャッフルがラストのフリとしてしっかり機能してるのは偉い。


この映画のピークはやはりトリニティ実験。
不安を内包しつつも見えない力に押されるように原爆開発が進んで行くシーンは、音楽も相まってジワジワと緊張感が高まっていく。
そして運命の爆破実験では、これでもかと特撮技術を詰め込んで緊張感のある核爆発シーンを作り出している。
核の閃光の後、数秒遅れてくる爆音と爆風は凄まじく、他の映画では観れない迫力。


核投下成功の祝賀会で、聴聞会パートで度々鳴り響いていた地鳴り音の正体が判明するシーンは鳥肌モノ。
オッペンハイマーが罪悪感から見てしまう幻覚の演出がかなり秀逸。

ただ、実際の広島、長崎の映像をわずかでも挿入したほうが、オッペンハイマーの罪悪感に説得力を持たせられたろうし、原爆を題材にすることの意義にもなっただろうと思う。


ストローズの謀略によって社会から責められることは、オッペンハイマーに対する罰ではあるのだけど、
逆にストローズという分かりやすい敵役がいることで、オッペンハイマーの罪がボヤけてしまっている感もある。
3時間は長すぎるので、ストローズの公聴会はもっとがっつりカットしてもいいと思った。
つまんないし。


フローレンス・ピューはめっちゃいい。
存在感が凄い。
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