なめこ

オッペンハイマーのなめこのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
イチ日本国民のノーランファンとしてこの映画を観ない理由はどこにもなかったので、まずは配給会社の方に公開してくれてありがとうという気持ちでいっぱいでした。本当に観れてよかった。
しかしその、「日本国民として」感じたことと「ノーランファンとして」観た気持ちは自分の中で矛盾し、まとまりきることはなかった。
相変わらずの映画の多重構造と、オッペンハイマーの不完全さが印象的。基本的にオッペンハイマー自体に悪印象は残らないようなつくりだったと思うが、ナチス降伏後に焦りから「日本に落とすのはどうか」と提案したことは忘れられない。しかし僕も当時の大日本帝国は異様だと思うし、その異様さに対する怖れは敵対国からすれば余計にあったのだろうという気持ち、またオッペンハイマーの「実績欲しさ」の気持ちも分かる。
登場人物が多くて混乱とよく言われるけど、それはつまり出てくる役者が多いということ。見覚えのある俳優陣が全然チョイ役で顔を出すので、なんと贅沢な!!とわくわくしちゃう。そして何かしでかしそうな人はきちんとやってくれる。
トリニティ実験前の盛り上がりはテネットかヤシオリ作戦と同じものを(映画のつくりも自分の感情にも)感じ、複雑な気持ちに。。しかしのちの国民からの賞賛は完全にトラウマとして、悪として描かれていた。この映画は確実に反戦映画であったと思う。
"ニア・ゼロ"の残り火の中で生きていく、我々……
なめこ

なめこ