ゆう

オッペンハイマーのゆうのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
ナイフで人殺しが起こっても、ナイフを作った者の責任が問われることはない。良し悪し両面ある行為は、中立的行為として犯罪を構成しない。よくいわれるように、善悪はそれを用いる者の心の中にある。
一方、大量破壊兵器の開発はどうか。多くの人を殺傷する目的以外に目的を見出すことは困難であり、実際に兵器を利用した行為者のみならず、開発者にも責任の一端を認めざるを得ない。

もっとも、戦時下における敵国への攻撃が犯罪を構成しないことは、各国共通のルールである。むしろ攻撃への非協力、例えば武器開発からの脱却は、敵国への賛同、つまりは、反逆的な行為ととらえられる可能性がある。本作でいうと、水爆開発を拒むことが共産主義への傾倒ではないか、と疑われることになるのである。

広島・長崎への原発投下が、アメリカにおいて犯罪を構成することはない。当然である。もっとも、犯罪を構成するか否かは一面的事実に過ぎないことも事実である。少なくとも、道義的なそしりは免れない。遅きに失したが、オッペンハイマーもまた後悔の念にさいなまれる。

中東やウクライナ情勢等、世界で不穏な動きが続く中、本作がアカデミー作品賞を獲得した意味は大きい。

ラストシーン。オッペンハイマーは語る。
世界を破壊する連鎖反応を起こすかもしれない、そして、
"I believe we did"と。
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