肇

オッペンハイマーの肇のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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面白い映画だったけどエゴとエゴのぶつかりあいを3時間観続けて非常に消耗した……。事前情報で「後半1時間いらない」って意見を複数観測したけど、この映画はここから1秒も削れないと思う。全部必要なシーン。

あの立場にいたら仕方ないのかもしれないけどオッペンハイマーは非常にロマンチストで自己中心的で、やりたいことや自分の心を守りたがっているようにしか見えなかった。政治家ポジションにいる人っていろんな人にいい顔しないといけないから周囲の人は大変だと思う。そこに自ら進んで収まったか、唆されて収まったかは関係なく、他者を軽視できる面の皮の厚さがないと政治はやっていけないのだろう。こう書いてみると当たり前のようだけど、誠実な人付き合いはあんまり望めないだろうな。オッペンハイマー自身だけではなく、彼を尋問にかけていた人たちとかシュトラウスもそうだ。自分や国家の都合で人の尊厳を平気で踏み躙る。それももちろんめちゃくちゃ嫌だったけど、オッペンハイマーの身勝手さは映画内であんまり裁かれてないように思えたので……後世彼が抱いていた罪悪感が非常に彼を苛んだのは確かだろうし、そのせいで他のことにはとても気を回す余裕はなかったのかもしれないし、国家ぐるみで「原爆の父」を負わせられた彼にそれ以上を求める気にはなれないけど、第三者としては彼の甘い部分が非常に目についた。
かつて携わっていた身として、物理学がどんだけロマンの学問か少しは知ってるので、そこに引き寄せられてきた人材がああいう人たちばかりだというのは、自分もその一員だから分かる。
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