「あー面白かった!」
と笑顔で映画館を出る人なんて1人もいない。これは罪と罰の映画だ。
「オッペンハイマー面白かった?」と聞かれたらめちゃくちゃ返答に困る映画。
この映画の感想を端的に伝えるなど困難で、「恐怖映像体験だった」と答えるだろう。
ユダヤ。ナチス。赤狩り。冷戦。ソ連。共産主義。原爆。広島長崎。1945年。
これらキーワードの事実関係をさらっとでもいいからおさらいしてから鑑賞すればよかった。と少し後悔。
振り落とされないように集中力をMAXにして鑑賞していたらあっという間に3時間経っていた。「ボーは恐れている」でゴリゴリに3時間しっかり感じた映画とは対照的だ。
時系列シャッフルは「メメント」ばりでオッペンハイマーとストローズの対立構造は「プレステージ」ぽい。そして亡き女性に苦しめられるのは「メメント」「インセプション」か。
なるほどね。ノーラン集大成ってそういうことか。
この映画、息ができなくなるくらいの緊張感を何度も味わうことになる。
とくにトリニティ実験。
砂漠に設置された原爆。このシーン。
スイッチオンまでのカウントダウンで心臓が口から出るんじゃないかと思った。
そんな最悪(米国にとっては希望)なカウントダウンの最中にオッペンハイマー(キリアンマーフィー)が
「心臓に悪すぎる」なんてセリフを言うもんだから、観客の気持ち見透かされてるなーと心底思った。
そして成功からの祝賀会のシーン。
原爆のシーンは光が先にやってきて爆風と爆音が後から襲ってくるが、このシーンも同じ。
自分のセリフが先に静寂の中にこだまする。静寂。空白。遅れて歓声と拍手の轟音が襲ってくる。
「自分は大量虐殺兵器を作ってしまった」後悔と周りの賞賛のコントラスト。
このシーンの表現は「さすがノーラン」と手を打つしかなかった。
なんだか駄文をダラダラと書いているが全く書き切れる自信がないのでここで終わる。
この映画を観て強く思った疑問がある。
アメリカ人はこの映画を観て何を思うのだろう?