『北欧の壮大な大地を舞台に繰り広げられる、一人の男の心震える復讐の旅路』
ロバート・エガース監督最新作。スカンジナビアの神話やアイスランドの英雄伝説、ヴァイキング伝説を基にした復讐譚で新境地を切り開くアクション大作。豪華キャスト陣の怒涛のアクションと映像美による没入感MAXリベンジ・アクション・エンターテイメント。
悲鳴と歓声と奇声が飛び交うダークで終始悪天候な世界観は健在で、今作で監督が描こうとした「暴力を祝福する文化」によってよりバイオレンスな刺激を感じるエンターテイメントが一台のカメラで臨場感たっぷりに映し出されていた。
実際のロケーションでの長回しフィルム撮影というこだわりと、キャスト陣のストイックな役作りによってシーン毎に何度も最初から撮り直しをしたという裏話が頷けるクオリティに仕上がっている。単純にメジャーな役者が共演している訳ではなく、監督との信頼関係によって一人一人が重要なピースとしてはまっている。特にこの物語の映画化を自ら監督に持ちかけた発案者である主役アレクサンダー・スカルスガルドの熊のような強靭な体作りは印象的で今作を象徴するマッチョでステレオタイプな戦士に仕上がっていた。
またハムレットの要素や数々の神話や伝説的要素を織り交ぜつつもリアリティを保っているというのがこの作品の特徴として挙げられると感じる。800年代後半から900年代前半にかけての各国の民族や信仰背景なども細かく登場させ歴史に忠実な作りをしている点で凄く新鮮さがあった。
作品のテーマによる形式の選択に一切の妥協を許さない監督のストイックさと、ストックホルム出身のスカルスガルド、『ウィッチ』に感銘を受け自宅に監督を招いたビョーク、共同で脚本を書いた小説家のショーン、といった偶然の出会いが重なったことにより実現した"歴史的に正確な描写で蘇るヴァイキングの世界"を堪能出来る作品。15トンもの黒砂を採掘場に運び込んで火山を模したという壮大なフィナーレも圧巻で、闘うアムレートとフィヨルニルのシルエットを映し出すシーンから想像の上をいく決着、壮絶なラストは必見。