風来坊

ノースマン 導かれし復讐者の風来坊のレビュー・感想・評価

4.0
「ライトハウス」で独特な世界観を作り上げて映画ファンを唸らせたロバート・エガース監督。次回作はどういうテーマで撮るのかなと思っていたらまさかのヴァイキングを描いた歴史物とは。
北欧神話をベースにこの監督の独特な演出で復讐劇を描いていました。

「ライトハウス」よりは抑え目ですが儀式の場面など、変態的な描写はこの監督の独壇場といったところ。ところどころでのモノクロチックな映像もらしさを見せますね。
そしてやはりウィレム・デフォーさんの気持ち悪い演技は「ライトハウス」に引き続いて本作でも異彩を放っていました。

狂気に満ちた世界で役者陣の熱のこもった演技が光る。現代的な顔立ちなのでアニャ・テイラー=ジョイさんはこういう歴史物には合わない感じがしましたが、血なまぐさい話しの中での一輪の華ではある。
預言者役であのビョークさんが出演、ほとんど出オチですがインパクトはありました。ニコール・キッドマンさんはやはりこういう冷たい役は似合いますね。

北アイルランド、アイルランド、アイスランドで撮影を行った厳しくも美しい大自然が作品を締まらせていました。
目指す父親の敵が悪政の頂点にいる訳でなく落ちぶれているというのが、アプローチが変わっていますね。
いわゆる復讐劇ではあるものの、痛快さの欠片もなく人間の業や復讐の虚しさに焦点を置いていて好みは分かれるでしょう。

カラスが助けてくれるとか天翔る馬とか北欧神話らしくファンタジー要素もあるのですが、神々しくはなく何か泥臭い感じがミソだと思います。
最後のヘルの門での決闘の迫力は凄まじく鳥肌ものでした。取っ付きにくい作品とは思いますが監督の念が込められた怪作でした。
風来坊

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