ミチ

イニシェリン島の精霊のミチのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.2
大好きな監督、マーティン・マクドナーの待望の新作ということで期待値MAXのなか観てきました。

どうしてこんな話が思いつくのだろう!とワクワクしっぱなし。いい大人がいい大人に絶交を言い渡されるというしょうもない話なのに、人間の本質を突いていて、それでいていつまで経っても終わらない人類の争いの歴史を垣間見るような感覚。虹がかかった美しい島から始まった話とは思えない展開。

何もない環境で暇すぎると人は壊れてしまうのだろうか。こういったすれ違いや争いが起こらないために趣味や娯楽は存在しているのだろうか。まあ娯楽が溢れていても争いは続いているけども。

自分はこの島の人間の中で誰に当てはまるだろうかと考えた。パードリック?コルム?妹?ドミニク?つまらない話をし続ける性格もありつつ、突然この人イヤだなと思って突き放したりする部分もあったり、自分より下(と勝手に思ってしまう)人から距離をとったり、自分の価値観だけで周りの人に失望したり。共感できない人だらけの映画と思いきや自分の中に存在する部分を多く持っている人々でした。
前作スリービルボードでも感じたが監督が描く人間は欠陥だらけなのにとても愛おしいのは自分に通ずるものがあるからだろうな。

前作ほどミステリーやエンターテイメント要素は無く、淡々としていてきっと万人に愛される作品では無い気はするけど、これがアカデミー賞の作品賞とったらちょっと面白いな。

おまけ。ジェニーがかわいすぎたので私もロバ飼いたくなってしまった。

ネタバレ追記。
コルムが自分の指を切ってしまうの、どうみても狂気で自傷行為としか思えないけども、音楽を残す事を望んだ割には大した曲を作る事ができない自分に失望していて、言い訳を作りたかった部分もあるのかなと。
指を投げたことがないからアレなんだけど、指投げたら結構音がするもんなんですかね。。
ミチ

ミチ