ソラ

BLUE GIANTのソラのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.8
音が出る漫画と称される石塚真一の「BLUE GIANT」がアニメ映画化。原作者の石塚先生が納得した上で実写化ではなくアニメとして描かれた。

原作に少し手が加えられており、ただ必ず満足するように作られている。
絶対にお金を払って劇場で観るべき作品だった。それぐらい今作の音楽には手間と熱量と技術が詰まっている。

原作は、仙台編・東京編の第一部。ヨーロッパ編の第二部。アメリカ編の第三部。そして現在も連載中のニューヨーク編の第四部という構成である。本作は、第一部の仙台編の後半と東京編を凝縮して2時間に収められている。

主人公の宮本大は山田裕貴、大と運命的な出会いを果たす沢辺雪祈は間宮祥太朗、大の幼馴染である玉田俊二を岡本天音が演じる。
メインキャラクターに声優を使わず、畑の違う俳優を起用することには勇気がいる。10代から20代前半の特有の青臭さを持つ演技はこの3人でしか成立しない。

大が自身の夢を叶えるために努力を惜しまず、持ち合わせた才能と合わさって成長する様には青春を感じざるを得ない。
沢辺は、大と比べてジャズに関する知識や技術、経験を積んでいるからこそ斜に構えている。間宮祥太朗の声も相まってどこか鼻につく。しかし、本質は音楽に対する情熱を誰よりも持ち冷静に音楽やジャズに対しても考えを持つスマートな人間。
玉田は、打ち込めることを探す中で大から伝播したエネルギーを受け学生生活やお金を省みずジャズの心臓であるドラムに打ち込む。
3人の其々の青さが、応援したくなる巨星たる所以であると思われる。

彼らを支える周囲の人間にもフォーカスがあたり、感情移入がしやすい構成になっている。

『名探偵コナン黒鉄の潜水艦』でも監督を務める立川譲の持ち味である緩急が遺憾なく発揮されていた。

文句をつけるとすれば、演奏シーンになるとフル3DCGに変わるところ。アニメの『青のオーケストラ』でも用いられたこの手法は楽器の躍動感や音圧を視覚的に感じさせる上では非常に効果的ではある。しかし、その質によっては逆効果にもなり得る。本作でも日常的なシーンはしっかり描き込まれているのに演奏シーンはややチープさが拭えなかった。この点から『セッション』は超えなかった。

続編に期待!
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