このレビューはネタバレを含みます
地方から若者が上京し、東京で仲間を見つけ、ぶつかり合い困難を乗り越えながら成功し、次は世界を目指すーーこのスタンダードとも言えるストーリーに大きな力を与えているのは、なんといっても一流のジャズプレイヤーたちによる演奏だろう。沢辺が代打で出演したライブでのピアノソロに、共演のミュージシャンも観客も一目置いているシーンは、世界で活躍するピアニスト・上原ひろみ氏の圧倒的な演奏あってこそ説得力があるものだ。音楽ファンならずとも、心をつかまれたことだろう。
ジャズは説明なしに人を感動させる音楽だが、その歴史には深い悲しみと苦しみがある。これから世界に出ようとする宮本が、大いなるジャズの世界も人生の痛みも吸収して、自分の音を見つけてほしい。観終わった後で、そう素直に願える作品である。