がぶりえる

カッコーの巣の上でのがぶりえるのレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
4.7
とんだ騙し討ちを食らった。優しさに包まれた良い映画だなぁ…と思ったらラストの急なドギツイシリアス展開に打ちのめされた。観客を優しさと笑いで取り込んでくる映画かと思ったら最後の最後で突っぱねて奈落の底にサヨウナラ。憂鬱、ショッキング、胸糞。だけど社会の構造についての普遍的なテーマや人間の本質的な価値観に訴えかけてくる所を描写していると思う。観賞後、人間の本当の自由とは何か?人間を苦しめているものは何か?「普通」の定義とは何か?本当の幸せとは何か?といった普段から考えているけど永遠に答えの出ない疑問が頭の中をグルグル…。人里離れた山奥の精神病院で繰り広げられる様々な人間ドラマと院内の仕組みが全て現代社会の縮図となっていて痛烈な社会風刺となっている。精神病院という制限抑圧された環境でジャックニコルソンの枠に収まらない自由奔放すぎる行動は病院内で問題視され、異常者扱いを受け、力ずくで正しいレールに乗っけられる。彼の精神病患者の治療に対する正しい意見でさえまかり通らない。社会にとってルールは絶対の法であり、それにそぐわないものに対して社会は冷たい…。

ラストシーンは様々な捉え方があるだろうが、僕は希望と絶望がちょうど半分ずつだった。彼の目指した外の世界(それはつまり我々が生活している社会)に彼の望む自由と幸せがあるだろうか?